週に一度の、家族の音楽タイムをつくる
子どもは、あてにできることがあると育ちます。毎週もどってくる決まったひとときは、安心とここにいていいという感覚をくれます。音楽は、それをつくるのにぴったりです。家族の音楽の習慣に、才能も道具も、保育園のような計画もいりません。決まった時間と、お気に入りの歌がいくつかと、いっしょにちょっとおどけてみる気持ちがあればじゅうぶんです。
決まった時間が大切な理由
毎週同じ時間に何かがあると、小さな子はそれがあるかどうかを聞かなくなり、楽しみに待つようになります。その待つ気持ちも楽しさの一部で、くり返すことで、たくさんの歌を浅くなぞるより、いくつかの歌を深く覚えられます。習慣は、まだカレンダーが読めない子にとって、時の流れのしるしにもなります。ある歌が寝る時間が近いことを知らせるように、「音楽の夜」が週末が来た合図になるかもしれません。
本当に続けられる時間を選ぶ
いちばんいい時間は、負担に感じない時間です。金曜の夕ごはんのあと、日曜の朝のパジャマのまま、決まった曜日のお風呂前の10分。理想ではなく、わが家の一週間の形に合う時間を選びましょう。3回目でやめてしまう理想より、確実な短い10分のほうが、一度きりのりっぱな30分よりずっといい。続けることで、遊びが、子どもが待ちのぞむ家族の音楽の習慣に変わります。
流れはシンプルに
やさしい流れがあると、みんな何をすればいいかわかります。次に何が来るかわかると安心する小さな子にはとくに。
- 毎週同じ「はじまりの歌」で始めて、はっきりした始まりをつくる。
- お気に入りを2、3曲、順番に選んで歌う。
- くねくねおどれる、体を動かす歌を1曲。
- 静かでおだやかな歌でしめくくり、おわりの合図にする。
真ん中より、決まった始まりと終わりのほうが大切です。この前後のしきりがあるから、ただ歌を歌うのではなく習慣に感じられ、子どもはぐずらずに入っていけて、落ちついて終われます。
選ぶのは、みんなで
家族ひとりずつが1曲選ぶと、みんなのものになり、けんかも防げます。小さな子はいつも同じ歌を選ぶかもしれませんが、それでいいのです。くり返しが学び方だから。上の子は新しい歌を紹介できます。大人にも番があり、自分の好きな歌をさりげなく分かちあい、音楽は子どもだけでなくみんなのものだと見せられます。毎週選ぶ人を交代すれば、公平で、新鮮です。
不完全でいい
赤ちゃんがずっと泣いている週も、小さな子がすわろうとしない週も、だれかが疲れすぎている週もあります。どれも習慣をこわしません。価値は、その場にいることにあって、みごとな演奏にはありません。くずれてしまったら笑って、静かな歌を1曲歌っておしまいに。子どもは、ひと晩のごちゃごちゃより、ぬくもりと変わらなさのほうをずっとよく覚えています。うまくいかない夜も乗りこえる習慣こそ、本当にあてにできる習慣です。
少しずつ小さな工夫を
基本の形が落ちついたら、ちょっとしたおまけでおもしろさが続きます。ひとりひとつのマラカス、ふるスカーフ、終わりの歌で明かりを落とす。季節の歌をときどき入れたり、みんなを始めさせたり止めたりする「指揮者」を子どもにまかせたりしても。中心がわかるままでいられるよう、ゆっくり加えましょう。毎週新しくすることではなく、小さな驚きを入れられる、なじみの枠が大切です。
やさしく体を動かすことも
元気な歌を1曲入れれば、音楽の習慣は、小さな子に必要な毎日の体を動かす時間も届けます。お気に入りの歌に合わせておどる、足ぶみする、くるくる回るのは、体を使う遊びです。いっしょにすれば、「体を動かしてきなさい」と言うよりずっと実現しやすくなります。体を動かす歌をふくむ家族の音楽の習慣は、つながりだけでなく、小さな心臓と脚も元気にします。
雰囲気を守る
習慣は、守らせるものではなく、あたたかいままのときにいちばんうまくいきます。お勉強や、だれが歌詞を知っているかのテストにはしないで。ある週に加わりたくない子がいたら、ソファから見ていてもらいましょう。参加するかどうか選べる自由が、次に参加したくなる理由の一部です。音量は小さな耳にやさしく、きっちりした台本より、その場の元気さについていきましょう。
長く返ってくるもの
週に一度の音楽の時間は、何年もひそかに返ってくる、小さな習慣のひとつです。子どもはつながり、ことば、体の動き、あてにできるものがある安心を受けとります。大人は、準備にほとんど手間がかからない、いっしょの喜びの時間を手にします。歌そのものが変わったずっとあとも、家族でいっしょに歌うだけの時間があったことを覚えている子はたくさんいます。その、ここにいていいという記憶こそが、本当の贈り物です。
ポイント: 家族の音楽の習慣に必要なのは、上手さではなくくり返しとぬくもり。続けられる時間を選び、始まりと終わりを同じにして、みんなで選びましょう。