わが家だけの歌や口ぐせが、子どもの居場所の感覚を育てる

仲のいい家族には、たいてい自分たちだけのことばがあります。靴をはかせながらうたうへんてこな歌、玄関でいつも言うひと言、外の人には通じない、好きなごはんのなぞの呼び名。こうしたものは、ささいなことではありません。家族の歌や口ぐせで居場所の感覚を育てるのは、家族がするいちばん古く、お金がかからず、力のあることのひとつで、たいていの人は気づかないうちにそれをしています。

小さなひと言に、大きな意味があるわけ

家族の決まり文句は、ひみつの合図のように働きます。それを聞いた瞬間、子どもは自分が内側にいるのだとわかります。「わかる」仲間の一員だと。内側にいるという感覚こそが、居場所の芯です。歌も同じように働き、そこにリズムと気持ちが加わります。だから、赤ちゃんのころにうたってもらった歌が、何十年もたってから、気持ちまるごとをよみがえらせることがあるのです。くり返されるこうした小さな音は、家を思いださせる、耳の目印になっていきます。

きずなだけでなく、安心もくれる

なじみの歌やことばは、小さな子の神経にとって本当に働いてくれます。お風呂のときのいつものメロディー、さよならのときのいつものことばは、次に何がくるか、大丈夫だということを子どもに伝えます。子守唄がどの文化にもあるのは、そのためでもあります。家族の歌や口ぐせを使うとき、親は家族らしさを育てるだけでなく、疲れたとき、動揺したとき、新しいことに向き合うとき、子どもがよりかかれる確かな安心の合図もあげているのです。

たぶん、もうあるはず

何か新しいことを始める前に、1週間、自分の家の中に耳をすませてみましょう。いつも使っているひと言、つくりことばがひとつかふたつ、決まった家事のときの歌、ごはんのたびに出てくるジョーク。きっと見つかるはずです。それに気づいて、声に出して大切にしましょう。「これ、うちだけの言い方だよね」と名前をつけると、たまたまのくせが、子どもが感じられる、意識した居場所の糸に変わります。

わが家の歌と口ぐせを育てる、かんたんな方法

  • お片づけや着がえなど、毎日の場面のための短い歌をつくる。
  • ほかの誰にも意味がわからなくても、ふつうの物を呼ぶ家族だけのことばを残しておく。
  • さよなら、おやすみ、誰かが悲しいときに、お気に入りのひと言をくり返す。
  • 内輪のジョークは、あたたかくふれることで生かしつづける。
  • 祖父母から伝わる歌やわらべうたを、その人たちのことばのままでうたう。

メロディーが上手である必要も、ことばが韻をふむ必要もありません。大切なのは、それがわが家のもので、くり返されることです。家族が実際に使っている手づくりのよれよれの歌は、誰も覚えていないきれいな歌より、ずっと価値があります。

古いものを、手わたしていく

親や祖父母に、歌や口ぐせやわらべうたがあったなら、とくにその人たちのふるさとのことばなら、使いましょう。それを手わたすことで、子どもはほとんど知らない親せきとつながり、家族の声が世代をこえて生きつづけます。おばあちゃんの子守唄を新しい赤ちゃんにうたうのは、何十年も前へとのびる糸で、かかるのはうたうことだけです。それが、家族の歌や口ぐせで居場所を育てる、いちばん豊かな形です。

子どもにも発明させる

家族のいちばんいい口ぐせのなかには、子ども自身から生まれるものがあります。2歳の子の言いまちがい、4歳の子のつくりことば、いつかの夕ごはんで子どもが言ったおもしろいひと言。それをつかまえて、とっておきましょう。家族が子どもの発明をふだんのことばに取りいれると、その子は、ほかではなかなか味わえないほど、見てもらえている、自分はまんなかにいる、と感じます。自分の声が、家族の話し方をまさに形づくったのだと伝わるのです。

あたたかく、決して無理じいせずに

歌や口ぐせがきずなを育てるのは、それが心地よいあいだだけです。大きくなって、子どもが昔のお気に入りにあきれた顔をするようになっても、それはふつうのことで、無理に続けさせると、あたたかさがぬけていってしまいます。消えていくものがあっていいし、新しいものが生まれていい。どれかひとつをそのまま守ることより、家族のことばの、生きて変わっていくコレクションのほうが大切です。

元気について、ひと言

これは心配することではなく、楽しい毎日の暮らしの一部です。赤ちゃんや小さな子にうたったり話しかけたりすることは、ことばの発達ときずなも支えてくれる、うれしいおまけつきです。なじみの声や歌や自分の名前にほとんど反応しない、聞こえや、聞くこと、話すことに心配がある、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけ医に話してみましょう。確かめて、安心させてくれます。

いちばん大事なこと

家の中のくり返される小さな音、へんてこな歌、内輪のひと言、家族だけが使うことば。それは毎日、静かに子どもに伝えています。あなたの居場所はここで、ほかのどこにも、こんなふうに言うところはないよ、と。家族の歌や口ぐせで居場所を育てるのは、本当にこれほどシンプルなことです。今あるものに気づき、わが家のものをいくつか足し、古いものを手わたし、子どもたちにも足してもらいましょう。それは、耳で聞こえる居場所です。

ポイント: 家族だけの歌や口ぐせは「あなたは仲間だよ」という合図です。今あるものに気づき、わが家のものを足し、古いものを手わたしていきましょう。

NHS, Start for Life: talking and singing with your baby

UNICEF, Parenting: the power of singing and talking with your child