子どもといっしょにつくる、家族の思い出ボックス

家族の持ちもののなかでいちばん大切なものは、お金ではかれる価値のまったくないものだったりします。はじめての絵、産院のネームバンド、特別な日のチケット、まだたどたどしい字で書かれた手紙。子どもといっしょに家族の思い出ボックスをつくると、そうした小さな宝物がひとつの大切な場所に集まり、物をとっておくというふつうの作業が、子どもが何年も戻ってくる、居場所を感じるあたたかい習慣に変わります。

思い出ボックスが大切なわけ

思い出ボックスには、写真でいっぱいのスマホにはできないことがあります。手でさわれて、みんなのもので、いっしょに開けられるのです。本物の物を手にとると、画面をスクロールするよりずっとあざやかに思い出がよみがえります。子どもにとってボックスは、自分の毎日も、できるようになったことも、家族の瞬間も、とっておく価値があるのだという証拠になります。「とっておくほど、わたしたちは大切なんだ」という実感が、子どもの安心と自己肯定感を静かに育てます。

箱は、いっしょに選ぶ

まずは家族で入れものを選ぶところから。その最初の選択で、もう子どもたちのものになります。じょうぶな靴の空き箱、木箱、お菓子の缶、専用の思い出ボックス、どれでもかまいません。大切なのは、飾りつけができて、開けやすく、手の届く場所にしまえることです。子どもに色をぬってもらったり、シールをはったり、名前を書いてもらったりしましょう。いっしょにつくれば、その飾りつけが、ボックスがしまう最初のうれしい思い出になります。

中に入れるもの

  • はじめての絵、なぐりがき、最初のころに書いた字。
  • 特別な日のチケット、ネームバンド、小さな記念の品。
  • 手形や足形と、そのときの身長のメモ。
  • 誕生日に親が子どもへ書く手紙。
  • その子が言ったおもしろいことばの録音や書きとり。

何でもとっておきたくなる気持ちはこらえましょう。でないと、ボックスはただの物入れになってしまいます。魔法は、ためこむことではなく、選びぬいた小さなコレクションにあります。意味のある物ひとつは、なんとなくの物20個に勝ります。いっしょに選ぶことで、思い出は積みあげるだけでなく、選ぶものなのだと子どもに伝わります。

入れることを、小さな習慣に

ボックスは、そこに戻ることがやさしい習慣になると、いちばん生きてきます。誕生日ごとに、学年や年度の終わりに、特別なお出かけのあとに、何かひとつ入れる。何を入れるかを子どもといっしょに選び、なぜそれにするのかを話すと、とっておくことが、ふたりでふり返る時間に変わります。こうした小さな「入れる日」は、やがてそれ自体がならわしになり、子どもの小さいころの年月が過ぎていく目印になります。

いっしょに、何度も開ける

思い出ボックスは、しまいこむためのものではなく、また開けるためのものです。雨の午後に、誕生日に、遠くの親せきを近くに感じたいときに開けると、コレクションまるごとが生きかえります。物を手にとって、おはなしを語りなおし、昔の絵を見て笑う。本当の価値はそこにあります。開けるたびに、自分のおはなしと、家族の中の自分の場所の感覚が強くなっていきます。

家族みんなのものも入れる

思い出ボックスには、子ども自身の節目だけでなく、もっとたくさんのものを入れられます。祖父母の写真、親せきが使っていた小さな物、誰かの手書きのレシピカード。今をこえた人たちや世代へと、子どもをつなげてくれます。遠くに住んでいたり、もう亡くなっていたりする親せきなら、こうした記念の品が、あたたかく手でさわれる橋になります。それこそが、子どもといっしょに家族の思い出ボックスをつくることのいちばんすてきなところです。世代をぬいあわせてくれるのです。

大切に、でも手の届くところに

子どもが見ることのない押し入れの奥にしまいこむのではなく、少し手伝えば子どもが取りだせる場所に置きましょう。手が届くことで、忘れられた保管庫ではなく、家族の暮らしの生きた一部でいられます。とくにこわれやすい物や、かけがえのない物は写真に撮っておけば、こぼしたりなくしたりしても思い出がまるごと消えずにすみます。でも、ボックスそのものは、さわられて、愛されるままにしておきましょう。

つらい思い出について、ひと言

思い出ボックスには、自然と、つらい時期を思いださせるものも入ってくることがあります。亡くなった親せきの形見などです。それは子どもが悲しみ、思いだしていくうえで健やかな一部になりえますが、子どものリードについていきましょう。ある物を見るたびにつらさが長く続く、身近な人との別れが子どもにとってとても大変になっている、という場合は、地域の保健師さん、かかりつけ医、遺族を支える相談窓口が、年齢に合った手助けをしてくれます。急がなくていいのです。そろえることより、なぐさめのほうが大切です。

箱いっぱいの「とっておく価値」

子どもが宝物にするものをつくるのに、工作の腕も大きな予算もいりません。いっしょに箱を選び、意味のある物をいくつか、ゆっくり入れていき、小さな習慣として足していき、何度も開ける。子どもといっしょに家族の思い出ボックスをつくると、子どもには、自分のおはなしのための、手でさわれて何度でも戻れる家ができます。そして、とっておく価値があると思ってくれた家族の一員なのだという、あたたかく長く続く思い出になるのです。

ポイント: いっしょに箱を選び、意味のある物を選んで小さくとっておき、習慣として足していき、何度も開けておはなしを味わいなおしましょう。

UNICEF, Parenting: play, memory and connection

CDC, Positive parenting tips and child development