遊びで始める、はじめての引き算
りんごをかじると、りんごが少なくなる。塔をくずすと、積み木がばらばらになる。シャボン玉がはじけると、消えてしまう。「とってしまう」ことは、一日じゅう、お子さまのまわりで起きています。ものが少なくなる毎日の経験こそが、プリントなしに、遊びで引き算を始めるのにぴったりの出発点です。
引き算は、「とる」こと
いちばんシンプルに言えば、引き算とは、まとまりの一部がいなくなって、少なくなることです。子どもはマイナスの記号に出会うずっと前から、おやつを食べるたび、おもちゃを片づけるたびに、それを感じています。記号から始めるのではなく、この暮らしの経験の上に積みあげると、引き算ははじめから、子どもが思いうかべて理解できる本物の意味をもちます。
おやつなら、おいしく学べる
食べものは、いちばん親しみやすい引き算の先生です。食べると自然になくなるからです。お皿にぶどうを4つのせて、いっしょにひとつ食べて、残りを数えましょう。「4つあって、ひとつ食べたから、今は3つ」。結果がお子さまにとって大事なので、注意を向けてくれます。ひと口ごとが小さくておいしい引き算の問題で、答えはその場で数えられます。
「とる」遊び
- 積み木を5つ積んで、いくつかたおし、残りを数える。
- シャボン玉をふいて、はじけるたびに、いくつ残っているか数える。
- ミニカーを並べて、何台かを「車庫」へ走らせる。
- 1番ごとにひとつずつ減っていく、数え歌や手遊び歌を歌う。
どれも量が小さくなっていくのを見られるので、減っていく数が目に見えて本物になり、遊びで引き算を始めるいちばんわかりやすい方法になります。
小さく、数えられる数から
数はらくに届く範囲、最初は5までに。はじめはひとつだけとりましょう。「ひとつ少ない」がいちばんやさしい一歩です。数が小さければ、子どもはまとまり全体を見て、いくつかがいなくなるのを見て、迷わずに残りを数えられます。「ひとつ少ない」がらくになったら、2つとってみたり、全部なくなって何も残らないとどうなるか探ったりしましょう。
演じてから、数をことばに
問題を遊びで演じたら、ことばにしましょう。「積み木が5つ、2つたおれて、3つまだ立ってるね」。場面と結果をいっしょに言うと、遊びと算数がつながります。式を書く必要はありません。話しことばが必要なことを全部運んでくれます。「5から2へると3」を何度も聞くことのほうが、どんな記号よりも考えを育ててくれます。
数え歌と手遊び歌
1番ごとに登場人物が減っていく歌は、音楽にのせた引き算です。「5つのメロンパン」のように、ひとつずつ買われていって、最後になくなる手遊び歌はぴったりです。1番ごとにひとつ減るたびに、お子さまは数が下がっていく流れを聞き、毎回ひとつ少なくなる模様を感じます。指を立てて、1番ごとに1本ずつ折っていくと、手で感じられる層が加わり、小さくなっていく量が具体的になります。
ゼロに出会う
引き算は、自然と大きな考えにつながります。何も残らない、です。最後のぶどうを食べたとき、最後の積み木がたおれたとき、ことばにしましょう。「ぜんぶなくなったね。ゼロだよ」。ゼロは、ひとつもないことを表す本当に抽象的な数なので、からっぽのお皿を通して出会うと、本物になります。子どもは「ぜんぶなくなった」をいちばん満足できる結果のひとつと感じることが多く、ゼロという考えを紹介するうれしい方法になります。
まちがえても、軽やかに
お子さまはよく残りを数えまちがえますが、まったくふつうのことです。3つなのに4つ残っていると言ったら、きつく直すのではなく、明るくいっしょに数えなおしましょう。数えなおすことが確かめることを教えてくれ、それが役に立つ力です。あたたかく、ゆったりこたえると、引き算はテストではなく遊びのまま。お子さまは喜んで加わりつづけます。
理解のサイン
とると少なくなる、と予想する、残りを知るために数をさかのぼって数える、ちょうどいいときに「ぜんぶなくなった」「ないよ」と言う。遊びのなかで「2つ食べたから、あと1つ」と、自分の引き算を声に出しはじめることもあるでしょう。こうした小さなサインは、とるという考えが、お子さまの考えのなかで本物の道具になりつつあるしるしです。
気になることがあれば
量やとることの理解は、幼児期から小学校のはじめにかけて少しずつ育ち、子どもによって大きな差があります。まわりの子とくらべて、数や数えること、量にほとんど興味を示さない、毎日の考えやことばが全体的にむずかしそう、できていたことができなくなったようだ、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さん、園や学校の先生に気軽にひと言伝えてみましょう。早く伝えることは特別なことではなく、助けを受けやすくしてくれます。
引き算は、食べたおやつから
引き算は、マイナスの記号からではなく、食べたおやつ、たおれた塔、はじけたシャボン玉から始まります。こうした毎日の場面を頼りに遊びで引き算を始め、数は小さく、雰囲気は明るく。そうすればお子さまは、とると少なくなるという考えを、式を書くずっと前から、もう深くわかっているはずです。
ポイント: 食べる、たおす、はじける、で量が小さくなるのを見せましょう。数は5までにして、残りを数えれば、とることが本物の感覚になります。