積み木遊びで育つ、はじめての算数
塔を積んでいる子は、ただ重ねているだけではありません。段の数を数え、どの積み木ならバランスがとれるかを考え、どの形がはまるかに気づき、自分の塔を親の塔とくらべています。つくる遊びには算数の考えがぎっしりつまっていて、プリントはまったくいりません。積み木遊びを算数に生かすとは、つくっているお子さまと、ただおしゃべりすることです。
つくる遊びは、姿を変えた算数
つくるとき、子どもは数、形、大きさ、バランス、空間に一度に出会い、それを手で感じられます。大きな積み木を小さな積み木にのせるとどうなるか試し、塔の高さを数え、どうしてたおれたのかを考える。これは豊かな、自分で進める学びです。親の役目は取ってかわることではなく、そこにある算数に気づいて、やさしくことばにすることです。
つくりながら数える
塔は、自然な数えるマシンです。積みあがるたびに数えましょう。「いち、に、さん階だね」。箱に残っている積み木の数を数える。ふたつの塔をくらべる。「あなたのは5つ、わたしのは3つ。どっちが高い?」。積み木はひとつずつはっきり数えられるものなので、ひとつの数をひとつの物に合わせる、数えることの本当の根っこを、授業の感じなしにたっぷり練習できます。
形と、その役目を話す
ちがう積み木は、ちがう仕事をします。それは、待っている形の授業です。平らな積み木はいい土台になり、長い積み木はすきまにかけられ、さんかくの上には積めない。つくりながら形の名前を言って、何をするかに気づきましょう。「しかくのは安定してるね。まるいのはころがっていっちゃう」。形の名前を、形のふるまいかたに結びつけると、ただ名前をつけるよりずっと深くなります。
ちりばめたい算数のことば
- 高さ:高い、低い、「あなたと同じくらいの高さ」。
- 数:積み木はいくつ、あとひとつ、何階か数える。
- 大きさ:大きい積み木、小さい積み木、どっちが長い。
- バランスと空間:うえ、した、となり、入るかな。
遊びのあいだにこうしたことばを織りこむことこそ、積み木遊びを算数に生かす中心で、ふつうの積み重ねが、続いていく算数のおしゃべりに変わります。
バランスには、自分で教えてもらう
塔がたおれたとき、価値ある学びがただでやってきます。急いで積みなおさずに、いっしょに声に出してふしぎがりましょう。「どうしてたおれたのかな?うえが重すぎた?したをもっと広くしてみる?」。これは本物の問題解決で、はじめての物理です。広くて重い土台が塔を支えることを、子どもは自分の手で原因と結果を発見しながら学びます。それは親のどんな説明よりも価値があります。
くらべて、はかる
つくる遊びは、自然とはかることに誘います。どっちの塔が高い?並べて見てみよう。壁は積み木何個分の長さ?並べて数えよう。くまさんと同じ高さのものをつくれる?こうしたくらべっこは積み木を単位として使い、同じものを並べて数えることではかる、と教えてくれます。ものさしではなく遊びでつかむ、本物のはかる考えです。
計画どおりに、そして変えてみる
年中、年長くらいの子は、計画を立ててつくるのを楽しみます。橋、車庫、おうち。何をつくるか計画して、どのパーツがいるかを考えると、ちょっとした筋道や順番の考えが入ってきます。途中でうまくいかなくなって直さなければならないことが、しなやかな考えかたを教えてくれます。設計はお子さまにリードしてもらい、「まちがい」を直したくなる気持ちはおさえましょう。ぐらつきや積みなおしのなかに、学びの多くがあるからです。
算数をしながら分けて片づける
しまうことさえ算数です。色、形、大きさで積み木を箱に分けてもどすのは分類で、本物の考える力です。「長いのはここ、しかくいのはあっちに置こう」。数えながらもどすと、全部そろっているか確かめられます。お片づけの時間を、さっと分けて数える遊びにすると、算数が遊びの最後まで続きます。
理解が育ってきているサイン
お子さまが自分の塔の段を数える、仕事に合った形を選ぶ、塔が立つかどうか予想する、言われなくても大きさをくらべる。「せかいいちたかい塔!」と発表して、親の塔とくらべて確かめることもあるでしょう。こうしたサインは、つくる遊びが、お子さまが手を使って考えを試し、問題を解く、算数の考えの場所になったしるしです。
もっと広い心配があるとき
つくる、数える、空間の力は、幼児期を通して少しずつ育ち、子どもによって大きな差があります。まわりの子とくらべて、つくる遊びや積み重ね、数の遊びにほとんど興味を示さない、体の動き、毎日の考え、ことばが全体的にむずかしそう、できていたことができなくなったようだ、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さん、園の先生に気軽にひと言伝えてみましょう。早めの相談はめずらしいことではなく、必要な支援につながりやすくなるだけです。
積み木の箱は、算数セット
リビングの積み木の箱は、まるごとひとそろいの幼児期の算数セットです。数える、形、大きさ、バランス、はかる、が、シンプルなつくる遊びのなかに全部入っています。積むお子さまのとなりでおしゃべりし、塔がたおれたら声に出してふしぎがり、数と形をことばにする。そうすれば、もう大好きな遊びが、手で学ぶ豊かな時間に変わります。
ポイント: お子さまのとなりで積みながら、数、形、大きさをことばにし、たおれる塔にバランスを教えてもらいましょう。ふつうの積み重ねが、豊かな幼児期の算数になります。