暮らしのなかで「多い・少ない」を伝えるには
数を数えられるずっと前から、子どもはどっちが大きいほうをもらったかについて、はげしい公平の感覚をもっています。その感覚は、まじりけのない幼児期の算数です。「多い」と「少ない」は、子どもが本当に感じとる最初の数の考えのひとつで、台所、お風呂、おもちゃかごは、それをことばにするチャンスを、いくらでも自然にくれます。
数えるより先に、くらべる
ひとつの山がもうひとつより多いとわかるのに、正確な数を知っている必要はありません。2歳くらいの子は、レーズン10粒の山が2粒の山に勝っているとひと目でわかり、大きいほうを全力でほしがります。量をくらべるこの力が、のちに数えることが育つ土になります。だから暮らしのなかで多い・少ないを伝えるとき、親はそのあとに来るすべての数のことを支える下地をつくっているのです。
声に出して、何度も
子どもは、本物の場面に結びついたことばを聞くことで、こうしたことばを覚えます。コップ2つに水を注いで「こっちのほうが多くて、こっちは少ないね」。夕ごはんをよそって「わたしよりグリーンピースが多いね」。くらべることばは、目に見えるもののとなりにあるときだけ意味をもつので、子どもが見てさわれるものとセットにしましょう。ふつうの日々のくり返しが、静かに教えてくれます。
おやつは、いちばんの先生
食べものは正直で、やる気を引きだします。ひとつのお皿にクラッカーを3枚、もうひとつに1枚のせて、どっちが多いか聞いてみましょう。ベリーを少しのひとにぎりと、たくさんのひとにぎりにして、選ばせてあげましょう。おなかがすいた子にとっては本気の問題なので、ことばが残ります。やさしく広げることもできます。「きのうよりたくさん食べたね」「ジュース、少なくなってきたね」。
考えを運んでくれる、小さな場面
- 流しで、いっぱいのコップと半分のコップをくらべる。
- 洗たく物を分けながら、山のなかでくつしたがトレーナーより多いことに気づく。
- おもちゃ箱で、車と積み木、どっちが多いか聞く。
- ぶどうを分けるとき、みんな同じか確かめる、またはだれが多いか見つける。
どれも準備はいりません。もうそこにあるくらべっこを声に出すだけ。暮らしのなかで多い・少ないを伝える、いちばんかんたんな方法です。
ペアに「同じ」を足す
多いと少ないには、静かな相棒がいます。同じ、です。おやつを分けて2つのお皿をそろえると、量は大きいか小さいかだけでなく、同じにもなるとわかります。「これで同じになったね」とはっきり言いましょう。多い、少ない、同じの3つがそろうと、子どもは全体の絵を手に入れ、同時に、公平をめぐるたくさんの言いあいも先回りしてふせげます。
分けるのは、子どもにまかせる
ビスケットを配る係や、みんなにスプーンを渡す係をお子さまにまかせましょう。ひとりにひとつずつ渡しながら、体を使って量をそろえ、かたよって見えると自分で直すことがよくあります。この自分で分けることのほうが、親がやるのを見ているより、ずっとよくくらべることを教えてくれます。ぐらつくのは当たり前。すぐに手を出さずに、かたよりは自分で直させてあげましょう。
考えを広げることば
基本がわかったら、ことばを豊かにできます。「もうちょっと多い」「ずっと少ない」「あとひとつ」「だいたい同じ」は、子どもが大好きな細かいちがいを加えてくれます。「あといくつあればいい?」と聞くと、差を数えることへと背中を押せます。これは少し進んだ一歩です。クイズではなくおしゃべりのままにして、おやつを食べながらのふつうの会話の一部に感じられるようにしましょう。
トーンは、遊び心をもって
お皿が同じなのに、きょうだいのほうが多いとお子さまが言いはったら、それは勝つべきバトルではなく、いっしょに確かめるチャンスです。「数えて確かめよう」。ときには子どもが正しくて、親が見落としていたこともあります。こうした場面に好奇心で向きあうとくらべっこは楽しいままで、ちがいのたびに授業にすると、子どもはスイッチを切ってしまいます。
気づきそうなこと
何週間かすると、お子さまが自分から「多い」「少ない」と言ったり、量をはっきりわかったうえで「もっと」とたのんだり、不公平な分けかたに涙だけでなくことばで抗議したりするのが聞こえるかもしれません。言われなくても、どのおわんが多いか指さしはじめることもあるでしょう。こうした小さなサインは、考えが、世界をわかるための自分の道具になりつつあるしるしです。
もう少し支えを考えたいとき
多い・少ないの理解は、2歳から就学前の時期を通して少しずつ育ち、個人差もたっぷりあります。まわりの子とくらべて、くらべることばをほとんどわかっていないようだ、ことばや毎日の考えが全体的にむずかしそう、できていたことができなくなったようだ、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さん、園の先生に気軽に話してみる価値があります。こうした確認はよくあることで、役立つ支援を手配しやすくなるだけです。
おやつとコップがあれば、じゅうぶん
これを教えるのに、プリントもおはじきもいりません。必要なのは、おやつ、コップ、くつした、そしてふたりに見えるものを言う習慣です。暮らしのなかで多い・少ないを伝えつづければ、お子さまのなかにしっかりした、体で感じる量の感覚が育ち、やがて正式な算数がやってきたとき、なつかしい友だちに会うように感じられるでしょう。
ポイント: おやつ、分けっこ、お片づけのなかで、多い、少ない、同じをことばにし、分けるのは子どもにまかせて、くらべることを手で感じられるものにしましょう。