おはなしで始める、はじめての足し算
「池にカモが2羽いました。そこへ1羽、泳いできました。今、何羽?」。小さなおはなしに包まれると、足し算はむずかしい式ではなく、子どもが思いうかべて、気にかけられるものになります。おはなしは数に、いっしょになる理由をくれます。だからこそ、小さな子にはじめての足し算を紹介する、いちばんやさしい方法のひとつなのです。
足し算に、おはなしがうまくいく理由
小さな子は、記号ではなく、絵や場面で考えます。「2たす1」というむきだしの式は何の意味ももちませんが、2羽のカモに1羽が加わるのは、目に見える場面です。おはなしが意味をくれます。ものがいっしょになって、もっと多くなる。それこそが足し算の本当の中心で、記号ではなくおはなしから始めると、お子さまがしっかりつかまれる本物のものができます。
数は、うんと小さく
最初は、ひと目でわかるくらいのいちばん小さな数から。1に1、2に1を足すだけでじゅうぶんです。大切なのは大きな答えではなく、合わせると多くなるとわかることです。小さな数なら、頭のなかや指で問題を解いて、できたうれしさを感じられます。考えそのものがらくになってから、ゆっくり数を大きくしていきましょう。
本物のおもちゃで演じる
登場人物を動かせると、おはなしはもっとわかりやすくなります。マットにミニカーを2台置いて、もう1台走らせてきて、いっしょに数える。ピクニックにくまのぬいぐるみが3びき並んでいたら、2ひきやってくる。まとまりを実際に寄せあわせて全部を数えると、おはなしが手で動かせる足し算の模型になります。この演じることは、プリントのどんな絵よりもずっと力があります。
毎日の足し算のおはなし
- おやつのとき、「おせんべい2枚あるね。はい、もう1枚。何枚?」
- お風呂で、「船が3そううかんでるよ。もう1そう、やってきた」
- 着がえで、「くつした片方はいたね。あと片方。全部でいくつかな?」
- お片づけで、「箱に積み木が2つ。あと3つ入れよう」
こうした小さな本物の場面が、おはなしで足し算を始めるいちばんかんたんな方法です。数が、お子さまが実際にしていることを表しているからです。
指を道具に
指は、はじめての足し算のための、いつでも使えるすばらしい計算道具です。「2本出して。じゃあ、もう1本足すと、いくつ?」。おはなしのそれぞれの部分に合わせて指を出し、全部を数えると、子どもは自分で答えを出せます。指を使うのは、たよりすぎではまったくなく、部分が集まって全体になることを見る助けになる、健やかな段階です。
おはなし全体を言ってから、式を
問題を演じたら、数をはっきりことばにしましょう。「2と、もう1つで、3だね」。場面と数のことばをいっしょに聞くと、おはなしと算数がつながります。急いで何かを書く必要はありません。「2と1で3」という話しことばが、この段階に必要な意味を全部運んでくれて、記号は何年も待てます。
子どもに、おはなしの語り手になってもらう
こうした問題を楽しめるようになったら、自分でおはなしをつくってもらいましょう。「恐竜のおはなし、してくれる?」。恐竜が3びきドシンドシン歩いていたら、2ひきやってきた、と言うかもしれません。何びきか聞いて、いっしょに考えます。足し算のおはなしを自分で考えられる子は、足すとは合わせることだと本当にわかっています。遊びのなかでたどりつく、すてきな成長の一歩です。
まちがった答えを歓迎する
お子さまはよく答えをまちがえますが、それでまったくかまいません。カモ2羽ともう1羽で4羽と言ったら、あっさり直すのではなく、明るくいっしょにおもちゃを数えなおしましょう。数えなおすことが確かめかたを見せてくれ、それこそが本当の力です。こたえかたがあたたかいと、子どもはやってみようと思いつづけ、学びはそのやってみるところにあります。
理解が育ってきているサイン
いつも1からではなく、ある数から続けて数えはじめる、自信をもって指を使う、小さな足し算のおはなしに頭のなかで答える。足すといつも多くなる、と予想しはじめることもあるでしょう。こうしたサインは、合わせるという考えが根づいてきたしるしで、学校が始まったときに、もっと正式な計算をその上に積みあげる準備ができています。
相談の目安
合わせることやかんたんな足し算の理解は、幼児期から小学校のはじめにかけて少しずつ育ち、子どもによって大きな差があります。まわりの子とくらべて、数や数えること、量にほとんど興味を示さない、毎日の考えやことばが全体的にむずかしそう、できていたことができなくなったようだ、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さん、園や学校の先生に気軽に話してみましょう。早めに伝えるのはよくあることで、役立つ支援が早く届くようになるだけです。
足し算は、池のカモから
足し算を始めるのに、プリントも記号もいりません。必要なのは、池のカモ、マットの上の車、そして数にいっしょになる理由をくれる小さなおはなしです。おはなしで足し算を紹介し、本物のおもちゃと小さな数で演じつづければ、お子さまは足し算を、意味があって、思いうかべられて、なによりも楽しいものとして出会えます。
ポイント: 小さな足し算の問題を、本物のおもちゃや指で演じられるおはなしに包みましょう。合わせると多くなることが、具体的で意味のあるものに感じられます。