お勉強にしない、毎日の「かぞえる」の育てかた
小さな子にとって、数はドリルのなかにあるものではありません。いっしょにのぼる階段、お皿のぶどう、洗たく物から出てくる靴下のなかにあります。数えることがこうした小さな場面に織りこまれたままなら、お子さまにとって算数は、終わらせて丸をつけてもらう課題ではなく、親しみやすくて役に立つものになります。
「お勉強っぽさ」が逆効果になる理由
2歳、3歳の子を座らせて「数えるお勉強」をさせると、望んでいることの反対になりがちです。注意はふらふらし、親は直さなきゃというプレッシャーを感じ、全体になんとなくテストのような空気がただよいます。小さな子は、ことばを覚えるのと同じように数を覚えます。自分にとって意味のある場面で、気楽に、何度も出会うことによってです。お勉強にせずに数えるねらいは、そのプレッシャーをゼロに保って、好奇心に教えてもらうことです。
一日に、仕事をしてもらう
特別な活動が必要になることは、ほとんどありません。おせんべいを2枚わたして、何枚か言う。階段をのぼりながら段を数える。池のカモが3羽いるのを指さす。こうした小さな声かけが、何週間もかけて積みかさなっていきます。食べる、のぼる、水しぶきをあげる、という、もともとしたいことのなかにやってくるので、数は楽しさと競争せずに、そのまま楽しさに乗ってやってきます。
暗唱より、さわること
「いち、に、さん」をそらで言えるのはかわいい芸当ですが、本当に数えるとは、指がひとつの物にふれるたびに、ひとつの数のことばを合わせることです。そのふれるところを後おししましょう。数えながらグリーンピースをひとつずつお皿のはしへ動かす、ボタンを押しながら名前を言う。ゆっくり、ていねいに指さすところで本当の理解が生まれ、20までの早口でごちゃごちゃのダッシュより、ずっと価値があります。
小さな数から、何度も
大きな数を急ぐ必要はありません。ミニカー3台、階段5段、くつ2つを自信をもって数えられる子は、しっかりしたものをつかんでいます。小さな数をくり返すことが、のちに大きな数がのる土台をつくります。4をこえると数がわからなくなっても、まったくふつうのこと。今日のらくにできる端っこがどこにあるかを、教えてくれているだけです。
計画ではなく、子どものリードについていく
目に入るものを全部数える日もあれば、数にまったく見むきもしない日もあります。どちらでもかまいません。動物のおもちゃを一列に並べはじめたら、加わってその列を数えましょう。ほかのことに夢中なら、そのままにしておきましょう。お勉強にしない数えかたの価値は、まさにそれがしてもしなくてもいいものだからこそ。今日の「やらない」は後退ではありません。
一日のなかの、使いやすい場面
- 食事のとき、果物の数や、テーブルのスプーンを数える。
- 階段で、のぼるときもおりるときも一段ずつ数える。
- お風呂で、注いだコップの数や、洗った足の指を数える。
- お片づけで、箱にもどす積み木を数える。
暮らしに合うものを選びましょう。カリキュラムをつくっているのではなく、数に気づいて声に出すだけ。そうすれば、子どもは数のパターンをよく耳にします。
反応は、軽やかに
お子さまが数えまちがえても、きつく直したくなる気持ちはおさえましょう。やさしくいっしょに数えなおせばいいのです。「確かめてみよう、いち、に、さん」。あたたかさが扉をひらいたままにします。数のことで評価されたと感じる子は数をさけるようになり、ゆったりした気持ちの子は、自分から数えようとしつづけます。親の落ち着いた顔は、どんな正解よりも多くを教えています。
子どもが自分から、また始めるように
数えることがいっしょにする遊びのように感じられると、子どもは自分から始めることがよくあります。親のボタン、ビスケット、窓の外を通る車を数えだします。この自分から始めた数えっこはすばらしいしるしで、考えが自分のものになったことを示しています。そうなったら親の役目は、ほとんど「いいね」と言って、ゆっくり、いっしょに楽しむことだけです。
本当の進歩とは
進歩とは、何歳の誕生日までにもっと大きな数を、ということではありません。ひとつずつさわるのがしっかりしてくること、小さなまとまりを前より正しく数えられること、やってみようとする気持ちが育つこと。自分でまちがいに気づいて直したり、確かめるためにもう一度数えたりする姿も見られるかもしれません。こうした静かなしるしは、親せきの前で合図どおり10まで言えることより、ずっと大切です。
少し気にかけたいとき
ほとんどの子は、2歳から就学前の時期にかけて、ぐらぐらしながら少しずつ数えることを身につけます。まわりの子よりずっと、数やことば、いっしょにする遊びにほとんど興味を示さない、前にできていたことができなくなったようだ、あるいはただ気がかりが消えない、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さん、園の先生に気軽に話してみましょう。早めの相談はよくあることで、心配するようなことではなく、支援は早く始めるほどらくになります。
数は、遊べるもの
フラッシュカードも、アプリも、決まった時間もいりません。必要なのは、もうまわりにある物と、少しのいっしょに向ける注意だけです。お勉強にせずに毎日の物を数えつづければ、お子さまにとって数は、披露するものではなく、遊べるもの、世界の自然な一部と感じられるようになります。
ポイント: 食事、階段、お片づけのなかに、ゆっくり指さしながら軽やかに数えることを織りこみ、お勉強っぽさはまるごと手放しましょう。