幼稚園の入園前、子どもにどう話す?
幼稚園や保育園が始まる前の数日、小さな子の心の中には、ことばにできなくても、静かな疑問がいっぱいです。どこに行くの?いっしょにいてくれる?ママやパパが必要になったらどうするの?入園までにどう話すかで、初日に門をくぐるときの安心感が変わります。めざすのはシンプルなことです。正直で、あたたかく、明るいことばで、少しわくわくする気持ちを育てながら、まだ口にできない心配にこたえていくことです。
数日前から話しはじめる
何週間も前から盛りあげる必要はありません。かえって不安をつくることもあるからです。でも、数日前からそっと準備するのは助けになります。着がえのときや公園へ歩く道すがらなど、ふだんの会話に幼稚園の話を織りこんでいきましょう。一度にじっくり話すより、少しずつ何度も、のほうがずっとうまくいきます。小さく落ち着いた形で話していくと、入園は突然の大きな知らせではなく、なじみのある考えになっていきます。
具体的に、前向きに
小さな子は、抽象的なことではなく、絵で考えます。だから、目に浮かぶことばで幼稚園のことを話しましょう。おもちゃ、お絵かき、園庭、絵本の時間、おやつやお弁当。いっしょに遊べるお友だちや、助けてくれるやさしい先生がいることも話します。具体的で楽しそうなことを口にすると、子どもには楽しみにできるものができ、ぼんやりした「知らないところ」が、親しみやすい絵に置きかわります。ことばと同じくらい大切なのが、声にこもった本物のあたたかさです。子どもは親の気持ちをよく読んでいます。
親は帰ることを、正直に
本当のことをやわらげたくなりますが、子どもは正直なほうがずっとうまく乗りこえられます。親が幼稚園に連れていくこと、親はそこには残らないこと、そして何より、かならず迎えに来ることを、はっきり伝えましょう。お迎えを園での一日の出来事に結びつけると、時間の感覚がつかみやすくなります。「お弁当を食べたらね」「おやつのあとに迎えに来るよ」。この正直さが信頼の土台になり、親が思いがけずいなくなるという衝撃を防ぎます。
気持ちが来る前に、名前をつけておく
心の準備をしておくと、子どもは不意をつかれるのではなく、わかってもらえていると感じられます。「はじめは少しさみしくなったり、はずかしくなったりする子もいるよ。それはふつうのことで、だんだんなくなるよ」とやさしく話してみましょう。ママやパパに会いたくなってもいいこと、どきどきしたら先生が助けてくれることも伝えて安心させます。気持ちに前もって名前をつけ、感じていいと伝えておくと、当日に自分の反応にびっくりしにくくなります。
心配には、かんたんに正直にこたえる
子どもが質問してきたら、安心させるように、正直に答えましょう。「トイレに行きたくなったら?」と聞かれたら、先生が手伝ってくれるよ、と伝えます。知っている子がいないことを心配していたら、先生が見ていてくれるし、すぐにお友だちができるよ、と思い出させてあげます。「毎日ぜったい楽しいよ」のような約束しすぎは避けましょう。そのあと緊張した子が、何かおかしいのかと思ってしまうことがあります。ばら色の絵より、落ち着いた正直さのほうが安心させてくれます。
絵本と遊びにも語ってもらう
ことばはひとつの道にすぎません。入園をテーマにした絵本は、体験のための絵とことばを子どもにくれますし、ごっこ遊びは、それを演じて自分で動かせる感覚をくれます。ぬいぐるみが幼稚園に行き、遊んで、また迎えに来てもらう遊びは、離れてまた会うまでのひとつながりの予行練習になります。こうしたやさしい方法は、正面からの会話より深く子どもに届くことがよくあり、子どもがおはなしを通して心配を見せてくれる扉にもなります。
準備に、子どもも参加させる
実際の準備そのものが、安心のもとになることもあります。通園かばんを選ぶのを手伝ってもらったり、どのお気に入りの物を持っていくか決めてもらったり、初日の服や上履きを見せたりしましょう。入園前に園を見に行く機会があれば、親の話が、本物のなじみの場所に変わります。準備に小さな役割があると、子どもは「何かをされる」のではなく、親といっしょに新しい一歩をふみだすのだと感じられます。
親自身の声の調子に気をつける
子どもは親の気持ちにおどろくほど敏感です。この節目への親の緊張やさみしさが話しかたににじむと、子どもはその心配を吸いこんでしまうかもしれません。気持ちを全部隠すという意味ではありません。子どもと幼稚園の話をするときは、明るく自信のある調子を選び、親自身のゆれはほかの大人に話す、ということです。親の落ち着いた自信は、親が届けられるいちばん強い安心のひとつです。
もっと支えが必要なとき
はじめのうち緊張したり泣いたりするのはまったくふつうのことで、たいていは数週間で落ち着きます。ただ、数週間たってもひどいつらさがやわらぐ気配がない、はずかしがっているというよりこわがっているように見える、ひきこもったようになる、できるようになったことができなくなる、眠りや食事が長いあいだひどく乱れている、という場合は、園や地域の保健師さんに相談してください。親の直感を信じて。早めに相談するのは、いつだって理にかなった一歩です。
ポイント: 入園前の数日は、短く、正直で、明るい会話を重ねましょう。楽しいことを話し、気持ちに名前をつけ、かならず迎えに来るとはっきり約束します。