毎日の困りごとを、声に出して考えてみせる

子どもには、考えていることは見えません。親が頭のなかで問題を解くと、子どもに見えるのは、魔法のように答えが現れるところだけです。だからこそ、小さな頭のためにできる、とても役に立つことのひとつが、毎日の困りごとを声に出して考えてみせることです。何かを解いていく途中のごちゃごちゃを、子どもに聞かせてあげるのです。かんたんすぎるように聞こえますが、大人がどう考えるかを聞くことは、結果をきれいに説明するより多くを教えてくれます。

声に出して考えると、うまくいく理由

考えた道すじを声に出すと、見えないものが見えるようになります。問題はすぐには解けないこと、大人も行きづまってはやりなおすこと、質問と答えのあいだには道のりがあることが、子どもに聞こえます。考えるのには手間がかかるのがふつうだと伝わるのです。自信たっぷりの完成した答えばかり見ている子は、かしこい人はただ知っているものだ、苦労するのはかしこくないからだ、と思いこむようになるかもしれません。まちがいもふくめて親が考えていくのを聞くと、その反対のことを学びます。

実際には、こんなふうに

コツは、ふだんなら心のなかで思うだけのことを、口に出すことです。毎日の困りごとは、ぴったりの材料です。

  • 「ケーキをつくるのに、卵がひとつ足りない。うーん、代わりに何が使えるかな。バナナならいけるかも、考えてみよう」
  • 「ベビーカーがたためない。どこがひっかかってるか見てみよう。あ、ここがはさまってる。反対側からやってみよう」
  • 「遅れそう。今いちばん大事なのは何?靴と鍵。ほかはあとでいい」

どれもお芝居ではありません。心の声を、子どもに聞こえるところに出しているだけです。そうすれば子どもは、親が声に出して考えるやりかたから学べます。

進めながら、手順をことばに

問題を解くことには形があり、声に出すと、授業として名前をつけなくても、その形が伝わります。

  • 何が問題かを言う。「蛇口から水がぽたぽたしてる」
  • 原因をふしぎがる。「ちゃんと閉まってないのかな。それとも、すりへってるのかな」
  • 選択肢を考える。「きつく閉めてみるか、だれかに見てもらう必要があるかも」
  • ひとつ選んで、確かめる。「まず、きつく閉めて、止まるか見てみよう」

本当の場面で何度も聞いているうちに、言う、ふしぎがる、選ぶ、確かめる、というリズムを、子どもは吸収していきます。

まちがえるところも、見せる

いちばん価値があるのは、親のできることではなく、立ちなおるところです。最初の考えがうまくいかなかったら、そう声に出して、やりなおしましょう。「だめだった。まあいいか、ほかのやりかたを考えよう」。この習慣ひとつが、とても大きな力になります。うまくいかなかった挑戦は大失敗ではなく手がかりで、粘ることはふつうだと教えてくれるのです。まちがいを全部隠す親は、まちがいははずかしいものだと、うっかり教えてしまいます。立ちなおりを声に出す親は、立ちなおる力を教えます。

子どもを仲間に入れる

お手本を見せたら、小さな困りごとを子どもに渡しはじめられます。声に出して考えることが、いっしょに考えることになります。

  • 「塔が何回もたおれちゃうね。何がたおしてると思う?」
  • 「ふたりいて、ビスケットはひとつ。どうしたら公平かな?」
  • 「絵の具が水っぽすぎる。どうしたらいいと思う?」

ありそうにない考えでも子どもに出してもらい、安全なら試してみましょう。本当の小さな問題を自分で解くほうが、親がやるのを見ているより、ずっと満足できて、ずっと学べます。

ちょうどいい困りごとを選ぶ

すべての問題がこのやりかたに向いているわけではありません。子どもの段階と気分に合わせましょう。

  • 小さな子には、シンプルで具体的に。
  • 答えが本当にひとつではない問題を使う。
  • お金の心配や深刻な困りごとなど、子どもを不安にさせることは声に出して考えない。
  • 急いでいるときや、余裕がないときはしない。無理に声に出しても、だれのためにもなりません。

固いふた、見つからないおもちゃ、変えなければならない予定。毎日の暮らしの、失敗しても困らないなぞが、ちょうどいいところです。

声のトーンは落ち着いて

何を言うかと同じくらい、どう聞こえるかが大切です。あわてたり、イライラしたりしながら問題を声に出すと、子どもは問題はこわいものだと学びます。落ち着いた好奇心、ちょっとしたユーモアをもって声に出せば、問題は大ごとではなく、解いていけばいいなぞなのだと学びます。親の落ち着きは、学びの一部で、もしかするといちばん大きな部分です。

大きな心配について

毎日の困りごとを解くのは、家族の暮らしのふつうで健やかな一部です。ただ、小さな問題にふつうより強い不安を見せる、うまくいかないととても動揺する、まわりの子よりふだんのつまずきにずっと対処しにくそう、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに、一度そっと話してみる価値があります。ほとんどの子は、問題を解くところを気長に見せてもらえればよく、落ち着いて解くところを見るほど、できることも自信も増えていきます。

親の考える声が、子どもの道具になる

子どもは、親が考えるのを聞いて、考えることを学びます。毎日の困りごとを声に出して、問題をことばにし、選択肢をくらべ、何かを試し、うまくいかなかったら立ちなおるところも聞かせましょう。それから、暮らしの小さななぞに子どもを誘う。落ち着いて、好奇心をもって続ければ、この習慣はお子さまに問題への向きあいかたをまるごと手わたします。あわてるのではなく、立ちどまって、ふしぎがって、試して、またやってみる、という向きあいかたです。

ポイント: まちがいと立ちなおりもふくめて考えた道すじを声に出し、問題は一歩ずつ解いていくものだと見せましょう。それから、毎日の小さななぞに子どもを誘ってみてください。

NHS, Help your baby learn to talk

CDC, Positive parenting tips for preschoolers