買いものやお出かけを、クイズにしない学びのおしゃべりに
スーパー、郵便局、園への道。こうした場所は学びの敵ではなく、学びにいちばんいい場所のひとつです。本物の場所には、数字、ことば、選ぶこと、ふしぎなことがあふれていて、どれも子どもが見て、さわれる場面のなかにあります。コツは、お出かけをクイズにせず、学びのおしゃべりにすることです。お買いものが色や数のテストになったとたん、子どもは楽しめなくなり、親も楽しめなくなります。
お出かけが、豊かな学びの場である理由
毎日のお出かけには、プリントがなくても本物の学びがつまっています。お店では、量、値段、分けること、選ぶことに出会います。バスでは、路線図、停留所、時間に出会います。どんなお散歩にも、天気、季節、建物、生きものがあります。どれも本物で目的があるので、ここでの学びはフラッシュカードではなかなかできないかたちで残ります。お子さまは教えられているのではなく、世界の算数とことばのとなりで暮らしているのです。
おしゃべりと、クイズのちがい
クイズとは、答えを知っている質問を続けざまにして、子どもが知っているかを確かめることです。「これは何色?りんごはいくつ?あの標識はどんな形?」。子どもをその場で追いつめ、楽しさをあっという間に吸いとってしまいます。学びのおしゃべりは反対に、いっしょに気づいて、ふしぎに思うこと。親も本当に興味をもっていて、合格すべきテストはありません。同じお出かけがどちらにもなりえて、ちがいは、親の気持ちのもちかただけです。
質問より、感想を多めに
お出かけをクイズにしないいちばんかんたんな方法は、質問ではなく気づいたことから話しはじめることです。
- 「このみかん、すごくいいにおい。遠くから来たんだって、なんだかうれしいね」
- 「レジの列、長いね。今日はどうしてこんなに混んでるんだろう」
- 「あのバス、前に9番って書いてあるね。わたしたちが乗るのは19番だよ」
感想は、正しい答えを求めずに、子どもを話に誘います。親の糸を拾って、自分の考えを足してくれることがよくあり、それはクイズの正解よりずっと価値があります。
本物の仕事をまかせる
子どもは、役に立っているときにいちばん学びます。本物の仕事を渡すと、お出かけが手を動かす学びに変わります。
- 「トマトを3つ見つけて、袋に入れてくれる?」
- 「お買いものメモを持っててね。牛乳の次は何?」
- 「このふたつの食パン、どっちにする?選んでいいよ」
- 「降りるところに来たらボタンを押してね。見はり番はあなただよ」
本物の仕事には、数えること、読むこと、選ぶこと、責任が、テストの質問ひとつなしに織りこまれています。お子さまは、意味のあることをしながら学んでいるのです。
親の授業計画ではなく、子どもの好奇心についていく
いちばんいいおしゃべりは、親が教えると決めたことではなく、子どもの目にとまったものから始まります。レジのベルトコンベアに夢中なら、その話をしましょう。床がどうしてぬれているのか知りたがったら、ついていきましょう。子どもの興味を追いかけると、親が授業をしているのではなく、いっしょに探検している感じが続きます。子どもの質問こそがカリキュラムで、親が計画したどんなものよりいいカリキュラムです。
ただのお出かけの日があってもいい
すべてのお出かけを実りあるものにする必要はありませんし、毎回を学びのチャンスとしてあつかうと、みんなが疲れてしまいます。急いでいる日、子どもが疲れている日は、買いものをすませることが目的で、それでまったくかまいません。ほとんど話さない、ただ静かにいっしょにいるだけのお出かけも、むだにしたチャンスではありません。くたくたの子に無理におしゃべりを押しつけると、お出かけは問いつめられる時間だと教えてしまいます。それは望んでいることの反対です。
軽やかに、遊び心をもって
うまくいくトーンは、ゆったりしていて少し遊び心のある感じで、決してまじめくさらないこと。次の通路に何があるか当てっこ、赤いものを見つける競争、配達のトラックがどこへ行くのかのつくり話。遊び心が子どもを引きつけ、親子でおたがいを楽しめるようにしてくれます。大好きな人とする遊びのように学びが感じられると、子どもは身を乗りだします。テストされているように感じると、スイッチを切ってしまいます。
発達について、ひと言
毎日のお出かけでのおしゃべりは、ことば、考える力、自信を支え、子どもの育ちを助けるふつうの会話や遊びの一部です。お出かけのあいだほとんど話さない、年齢のわりにことばがとても少ない、ことばや聞こえに心配がある、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに伝えてみてください。でもほとんどの子は、どこにいても、気づいたことを声に出して質問を歓迎してくれる親といるだけで、のびのび育ちます。
お出かけは、おしゃべりのままで
お出かけは、お子さまの一週間のなかでも静かにいちばん豊かな学びの時間のひとつです。ただし、クイズではなくおしゃべりのままであればこそ。質問より感想を多めに、本物の仕事を渡し、子どもの好奇心についていき、ただのお出かけの日もつくる。軽やかに、心から続ければ、お店への道は、学んでいるとは一度も気づかないまま、数とことばと「ふしぎ」を学べる場所になります。
ポイント: クイズではなく、感想を話してふしぎがり、本物の仕事を渡し、子どもの目にとまったものについていきましょう。毎日のお出かけは、テストではなくおしゃべりのままのとき、いちばん多くを教えてくれます。