共働きで時間がなくても、すきま時間で親子のきずなは育つ
働く親の多くが、静かな胸の痛みをかかえています。時間がいつも足りない、離れている時間が子どもから何かをうばっているのでは、という気持ちです。もしそうなら、こんなやさしい真実を持っていてください。強いきずなは、いっしょにすごした時間の合計で測るものではありません。すきま時間で親子のきずなを育てられるとわかると、その重さはずいぶん軽くなります。そうした瞬間は、もう一日の中にちらばっていて、上手に使われるのを待っているのです。
つながりはマラソンではなく、一本の糸
子どもは、時間の帳簿をつけてはいません。心にきざまれるのは、一日や一週間の中に織りこまれた、あたたかいふれあいの一本の糸です。また会えたときの、心からうれしそうな30秒は、気もそぞろに近くにいる1時間より深く届くことがあります。この見方の切りかえは大事です。目標が、多くの働く親には本当に無理な「もっと時間をつくる」から、ほとんど誰にでもできる「瞬間を大切にする」に変わるからです。
おむかえの瞬間が、いちばんの見せ場
働く日の小さな時間の中で、いちばん力をもつのは再会の瞬間です。何時間も離れていたあと、どんなふうに子どもを迎えるかが、その夜ぜんぶの気持ちの調子を決めます。戻って最初の1分は、荷物でも郵便物でもスマホでもなく、子どものために使ってみましょう。目の高さまでかがんで、目を合わせ、会えてうれしい気持ちをまぎれもなく見せます。あたたかい「ただいま」「おかえり」は、長くなくていいのです。心をまるごとこめること。その毎日の確かな瞬間が、あなたは一日のいちばんうれしい部分だよ、と子どもに伝えます。
もうしていることに、つながりをくっつける
いちばん長続きするつながりは、カレンダーに新しい予定を入れなくてもいいものです。どうせ毎日あることに、ひょいと乗っかります。自然な乗っかりどころをいくつか。
- 車や自転車、ベビーカーでの移動中の、へんてこな歌やおしゃべり。
- 送りやおむかえのときの、抱っことひとつの質問。
- お湯がわくまでの2分、まるごと子どもに向き合う。
- テーブルを整える、ペットにごはんをあげるなど、いっしょの用事。
もうある習慣にくっついているので、忙しい週も生きのこります。これが、すきま時間で親子のきずなを育てることの芯です。一日に足すのではなく、もうあるものを豊かにするのです。
一日のはじまりと終わりを、あたたかく
子どもの一日の最初と最後の瞬間には、ほかよりずっと大きな重みがあります。朝の、急いでいてもちゃんと向き合った、やさしい「いってらっしゃい」。そして、ゆっくりあたたかい「おやすみ」。このふたつがあれば、昼間に何があっても、子どもには近さを支える2本のしっかりした柱ができます。働く親にとって、寝る前はとくに貴重です。たいてい、いちばん落ち着いていっしょにいられる時間だからです。急がない数分の絵本、おしゃべり、ただいっしょに横になること。それだけで、慌ただしい一日がそっとつくろわれます。
離れていても、そばにいる
離れているあいだも、つながりを止めなくていいのです。短いボイスメッセージ、お弁当箱にしのばせた絵、その子を思いだしたものの写真、窓からいつも同じように手をふるといった小さな習慣。どれも、何時間ものあいだ、糸をぴんと張っておいてくれます。もう少し大きな子なら、「夜、今日のこと聞かせてね」という約束があるだけで、にぎっていられるものができます。こうした小さなサインは「あなたのことを考えているよ」と伝えます。それこそが、子どもがいちばん知りたいことです。
スマホから、大切な瞬間を守る
ここは正直になりましょう。小さな瞬間をいちばんうばっていくのは、仕事そのものではなく、画面を通して家までついてくる仕事です。メールを半分見ながら、子どもにまるごと向き合うことはできません。いつでも連絡がつかなくていい、というわけではありませんが、おむかえ、夕ごはん、寝る前の流れなど、スマホを見ない時間をいくつか決めておくと、いちばん大事なときに親をまるごともらえている、と子どもは感じられます。近くにいる大人と、本当にそこにいる大人の違いに、子どもはちゃんと気づきます。
罪悪感を手ばなす
罪悪感は、あてにならない案内役です。疲れた親を、埋めあわせのしすぎ、物の買いすぎ、うしろめたさからの甘さへと押しやりがちですが、どれも子どもが本当に必要としているものではありません。子どもに必要なのは、あたたかく、ゆるがず、ほどよくそばにいる親で、働く親は、もちろんそういう親でいられます。働く姿は、目的をもつこと、社会の役に立つこと、立ちなおる力の、大切なお手本にもなります。小さな瞬間の愛情の糸は、本当にじゅうぶんなのだと信じてみてください。実際に、じゅうぶんなのですから。
このバランスが続けられないと感じるとき
ときには、その負担が、ただの忙しい時期をこえていることもあります。疲れ、気分の落ちこみ、つながれない感じがずっと続く、おむかえが楽しみではなく気が重い、何週間も子どもがずっと引きこもりがち、いつになくべったり、別れのたびにひどくつらそう、という場合は、誰かに話してみましょう。かかりつけ医、地域の保健師さん、職場の相談窓口が力になってくれます。親自身の元気は、子どもの元気と別のものではありません。すり減った親には、あげられるあたたかさが少なくなってしまうからです。
持っていてほしい安心
子どもと深くつながるのに、家にいる親でなければならないわけではありません。子どもが感じるきずなは、千のふつうのひらめきでできています。うれしそうな「おかえり」、いっしょに笑うジョーク、おやすみの抱っこ。すきま時間で親子のきずなを育てるというのは、そうしたひらめきがもう自分の手の中にあることに気づき、できるだけ多く、その中にまるごといることを選ぶことなのです。
ポイント: あたたかいおむかえ、スマホを見ない時間をいくつか、毎日の小さな習慣。それが、ただ時間を重ねるより、ずっと確かに強いきずなを育てます。