パパと子どものきずなは、毎日のお世話と遊びで育つ
子育てが始まったとき、自分はわき役だと感じる父親は少なくありません。慣れていないし、子どもが真っ先に頼るのはママのほう。赤ちゃんにとって自分は本当に必要なのだろうか。そんな思いがあるなら、いったん下ろしてみてください。子どもは、身近で関わってくれる父親がいることで大きく育ちます。パパと子どものきずなは、誰かのきずなの小さな代わりではなく、それだけでかけがえのないものです。うれしいことに、そのきずなに必要なのは、完璧さや生まれつきの才能ではなく、そばにいることと、あたたかさです。
パパの関わりは、本当に大切
長年の研究は同じ方向を指しています。あたたかく関わる父親がいる子は、気持ちの面でも、人との関わりの面でも、のちの学校生活でも、よい育ちを見せやすいのです。パパはもうひとりの親の代わりではなく、子どもにとって別の、大切な関係です。赤ちゃんは、ミルクをくれる人、抱っこしてくれる人、なぐさめてくれる人、遊んでくれる人ときずなを結びます。そこにはもちろん、パパも入っています。家庭のお世話の分担がどうであれ、パパがかけた時間は、子どもの中に長く残ります。パパは「いてもいなくてもいい人」ではありません。まんなかにいる人です。
自信は、見ているより、やってみることで
最初のうちは、失敗したらどうしようと一歩下がってしまい、下がっていたからこそ自信がもてない。そんなループにはまるパパも多いものです。ぬけ出す方法はかんたんで、とにかく手を出すこと。おむつを替える、お風呂に入れる、泣いたらあやす、ごはんを用意する。腕前は、ほかの誰とも同じように、やるほど上がります。赤ちゃんは育児書とパパを見くらべたりしません。パパのにおい、声、パパならではの抱っこのしかたを覚えているところです。手を動かすお世話の中で、きずなはきたえられていきます。
毎日のお世話が、そのまま関わりになる
きずなのために、特別な「パパの遊び」を用意する必要はありません。ふだんのお世話そのものが関係をつくります。一日に手間を足さずに、ぐっと近づけることをいくつか。
- 目を見て、話しかけて、へんてこな歌をうたいながらのおむつ替え。
- ミルク、スプーンでの離乳食、いっしょに食べるおやつ。
- しぶきと笑い声がつきもののお風呂。
- 急がずに、ゆったりとした寝る前の流れ。
- ベビーカーでのお散歩や車での移動中に、話したり歌ったり。
どれも、今の自分と違う人になる必要はありません。毎日の流れの中に、気持ちを向けて、ただいること。それが、パパと子どもの関わりのいちばん静かな芯です。
遊びは、パパの得意分野
パパの遊びには、体を使う、意外性がある、にぎやか、という独特の味があることが多く、小さな子はたいてい大好きです。じゃれあい、追いかけっこ、高い高いやぐるぐる回し、くすぐりっこ、予想のつかないおふざけ。これはただ楽しいだけではありません。うれしさと信頼、パパの腕の中は安全だという感覚を育て、興奮や大きな気持ちを扱う練習にもなります。いい親でいるために、落ち着いた静かな役でなくてもいいのです。パパの元気と遊び心は、子どもがかけ寄ってくる贈りものです。
話して、歌って、実況する
小さな子の脳は、ことばとあたたかいやりとりで育ちます。必要だと思うより、ずっとたくさん話しかけましょう。していることを実況し、見えているものに名前をつけ、音程がはずれても思いついた歌をうたい、同じ絵本を100回目でも読む。返事のできない赤ちゃんに話しかけるのは照れくさいかもしれませんが、愛着もことばも、こうして育ちます。パパの声は子どもの世界でいちばん安心する音のひとつになり、この小さな会話のひとつひとつが、きずなそのものです。
自分たちだけの時間を、自分のやり方で
誰かの子育てをまねする必要はありません。子どもといっしょに、ふたりのならわしをつくりましょう。いつもいっしょにすごす土曜の朝、ふたりだけの遊び、ふたりの道になった公園までのお散歩。こうした「いつものあれ」は、子どもにとって大切な目印になり、パパと子どもだけのつながりの太い糸になります。仕事で平日に家をあけることが多いならなおさら、大事に守ってください。
楽しいところだけでなく、頭の中の仕事も分けあう
遊びだけでなく、家族の暮らし全体にまるごと関わるとき、つながりは深まります。子どもの一日の流れ、好きな食べもの、服のサイズ、仲よしの子の名前を知っていること。しんどくて、疲れて、地味な部分も自分の番として引き受けること。そのすべてが、パパは自分のことを本当にわかって、大事にしてくれている、と子どもに伝えます。たいくつな部分も楽しい部分も、まるごと関わる父親であることが、きずなをしっかりしたものにします。
助けを求めたいとき
きずなをすぐに感じられないのはよくあることで、失敗ではありません。でも、子どもが生まれてから何週間、何か月と、気分の落ちこみ、つながれない感じ、不安、いっぱいいっぱいの感覚が続くときは、相談してください。父親にも産後うつは起こります。子どもの発達や、子どもとの関係に心配があるときも同じです。かかりつけ医や地域の保健師さんが力になってくれます。たずねることは、家族みんなのための、強くてやさしい一歩です。
今、育てているきずな
完璧にはいかないし、完璧でなくていいのです。子どもは、パパのお風呂やミルクが技術的に正しかったかなんて覚えていません。覚えているのは、うれしそうに見てもらえたこと、遊んでもらえたこと、大事にされたことです。パパと子どものきずなは、結局のところ、ふだんの瞬間にそこにいること、自分らしいあたたかさと楽しさを持ちこむこと、そして毎日「パパはきみのものだよ」と伝えつづけることで育っていきます。
ポイント: パパのきずなは、手を動かす毎日のお世話と、遊び心のあるかかわりで育ちます。どんどん手を出して、子どもに「パパはぼくといるのがうれしいんだ」と感じさせてあげましょう。