子どもの心に残る、家族の小さな習慣のつくり方

大人に、子ども時代のいちばんの宝物は何かとたずねても、高い旅行や大きなプレゼントをあげる人はあまりいません。思いだすのは、日曜の朝のホットケーキ、親がいつも言ってくれたおやすみのことば、車の中でうたったへんてこな歌、いつも歩いたあの道です。こうした小さなくり返しが、子ども時代の心の骨組みになっていきます。うれしいことに、子どもの心に残る家族の習慣は、意識してつくることができます。かかるのは、ほんの少し続ける気持ちだけです。

習慣が子どもにとって大切なわけ

家族の習慣とは、意味のあることを、同じやり方で、何度もくり返すことです。子どもにとって、このくり返しは宝物です。何が起きるかわかっているので安心でき、「これがうちの家族のやり方」と思えるので居場所を感じられます。習慣は時の流れに目印をつけ、家族らしさを形にし、暮らしがぐらつくときに子どもが戻ってこられる錨になります。ここがあなたの居場所、あなたはこの家族の一員、このあたたかさはいつもここにある。習慣は静かにそう伝えます。その安心の実感が、つながりの土台です。

習慣は、大きなイベントとは違う

習慣と特別な行事は混同されがちですが、むしろ正反対といってもいいくらいです。年に一度のテーマパークは、イベントです。心に残るのは、小さくて、よくあること。金曜の夜の映画、寝る前の絵本、園の門でのハイタッチ。何度もくり返されるからこそ、派手な一日よりずっと重みのあるものに積みあがっていきます。忙しい家庭や、余裕のない家庭には心強い話です。子どもに大切なならわしを贈るのに、お金も時間も、手のこんだ計画もいりません。

もうある一日から始める

いちばん始めやすいのは、すでにしていることに、少しの意識とくり返しを足した習慣です。今の毎日の流れを見て、小さくくり返せるあたたかさを、ひとつ足してみましょう。

  • 園での別れぎわに、決まったことばやタッチ。
  • 夕ごはんのときに、今日のうれしかったこととイヤだったことをひとつずつ話す。
  • お風呂のたびに、同じへんてこな歌。
  • いつも同じやり方のおやすみのあいさつ。
  • 決まった朝に、ホットケーキやちょっと豪華な朝ごはん。

どれも、一日に時間を足す必要はありません。子どもの心に残る習慣をつくるのに必要なのは、ひとつのあたたかいことを、「うちはこうするんだよね」になるまで続けることです。

一日の節目に習慣をつける

一日や一週間の中には、自然と習慣になりやすい瞬間があります。朝、食事、園や学校への道、寝る前の流れ、週末への切りかわり。どれも子どもが何度もまたぐ節目です。こうした節目に小さなならわしをつけると、子どもには頼れるつながりの時間ができ、切りかえもなめらかになります。たとえばお別れの習慣は、つらくなりがちな別れを、そっと乗りこえさせてくれます。

一年の節目にも

毎日の習慣と並んで、季節の小さな習慣は、時がめぐっていく感じと家族らしさを子どもに届けてくれます。豪華である必要はありません。寒くなって最初の焼きいも、誕生日の朝のわが家流のお祝い、家族で大切にしている行事の飾りつけをいっしょにすること、毎年の紅葉を見に行くお散歩。子どもはこうしたことをとても楽しみにしていて、待つ時間もうれしさの半分です。毎年くり返すうちに、子どもが自分の家族を語るおはなしの一部になっていきます。

シンプルで、続けられるものに

いちばんよくある失敗は、大きく始めすぎることです。習慣は、かんたんにくり返せてこそ。だから、たいていはシンプルなほうがうまくいきます。ストレスになる、お金がかかる、続けにくいならわしは、いつのまにか消えていき、子どもはそれをさびしく感じることもあります。疲れたふつうの週にも本当に続けられることを選びましょう。毎晩の2分のおやすみの習慣は、2回だけの手のこんだものに勝ります。すてきな瞬間を大切なならわしに変えるのは、くり返すことです。

子どもといっしょにつくる

子どもがつくるのに手を貸した習慣は、もっと特別になります。寝る前の歌を選んでもらう、土曜のならわしに名前をつけてもらう、ひみつのあいさつを考えてもらう。自分で習慣をつくった子は、自分のものだという誇りを感じ、親が忘れかけたころに「あれ、まだやってない」と言いだすのは、たいてい子どものほうです。いっしょにつくることで、これはわたしたちの、この家族だけの習慣なんだという感覚が深まります。

子どもといっしょに育つ習慣

子どもが大きくなるにつれて、習慣は自然に形を変えます。それは失うことではなく、健やかなことです。寝る前の絵本は寝る前のおしゃべりに、公園のお散歩はカフェでのひと休みに、へんてこな歌は内輪のジョークに。習慣の糸を持ちつづけながら形が変わるのを受け入れると、何年たってもつながりが生きつづけます。自立に向かって手をのばす年ごろの子にも、戻ってこられる確かな場所になります。大事なのは、きっちり同じ形よりも、ならわしそのものです。

ゆるやかに続ける

どんなに大切にしている習慣も、暮らしの中でとぎれることはあります。それでかまいません。誰かが体調をくずして金曜の映画の夜がなくなっても、その意味は消えません。習慣はあたたかさと安心の源であって、破ったら罪悪感をもつ新しいルールではないのです。楽しいままでいられるくらいに、ゆるく持っていましょう。子どもの心に残る家族の習慣をつくるとき、親は一生持っていけるものを子どもに渡しています。自分たちらしい、あたたかくてなじみのあるやり方をもつ家族の一員だという、静かで、ゆるがない感覚です。

ポイント: 小さく、シンプルで、くり返せる瞬間が、子どもに安心と居場所をくれます。毎日の中にかんたんな習慣をいくつかつくって、続けていきましょう。

UNICEF, Family routines and rituals

CDC, Positive Parenting Tips