ほめすぎない、具体的なほめ方で子どもの自信を育てる
「すごいね!」「えらいね!」「天才!」。こうしたことばは一日に何十回も口から出てきますし、どれも愛情から出たものです。でも、子どもの育ちについてわかってきたことからすると、ばくぜんとしたほめことばをずっと浴びせることは、期待するほど子どものためにならず、かえって自信をそっとけずってしまうこともあるようです。身につけたいのは、ほめすぎずに、具体的にほめること。そうすれば、親の励ましが、めざしているはずの立ちなおる力と自分を信じる力を、ちゃんと育ててくれます。
中身のないほめことばが逆効果になるわけ
何をしても「すごい」「天才」と言われていると、ことばはだんだん意味をなくしていきます。子どもは敏感なので、ほめことばが自動的に出ているのか、本当に心から出ているのかを感じとります。何でもほめられてきた子は、うまくやらなきゃと不安になったり、親の反応がないと落ち着かなくなったり、「できる子」でなくなるのがこわくて、むずかしいことに挑戦しなくなったりすることがあります。ほめすぎると、がんばることや学ぶことの満足感ではなく、親にほめられることがゴールなのだと、うっかり教えてしまうのです。数は少なくても心のこもったほめことばのほうが、ずっと子どものためになります。
見たことを、そのまま言う
いちばん役に立つ切りかえは、評価するのをやめて、描写することです。「いい子ね」と判定するのではなく、子どもが実際にしたことを、そのまま言葉にします。「積み木、ぜんぶ自分で箱にしまったんだね」。描写するほめ方がうまくいくのは、本当に見ていたことが子どもに伝わり、何がよかったのかがはっきりわかるのでまたできるし、親のラベルに頼らずに、自分で「やった」と誇らしく思えるからです。ほめすぎずに具体的にほめるには、目の前で本当に起きていることを、声に出して気づく習慣をつけましょう。
性質ではなく、がんばりをほめる
「頭がいいね」とほめるのと、「がんばったね」とほめるのとでは、大きな違いがあります。「かしこいね」「絵の才能があるね」のような決まったラベルは、そのラベルにふさわしくいられないかもしれない場面をこわがらせ、子どもは挑戦を避けるようになりがちです。いっぽう、がんばり、工夫、ねばり強さをほめると、力はとりくむことで伸びるのだと伝わります。がんばりに目を向けたことばの例です。
- 「むずかしかったのに、ずっとやってみてたね」
- 「別のやり方を考えたんだね」
- 「たくさん練習したから、できるようになってきたね」
- 「むずかしくなっても、あきらめなかったね」
こんなふうにほめられた子は、苦労すること、まちがえること、続けることをいとわない子に育ちます。それは、どんなひとつの成果よりずっと大切なことです。
心から、その場にふさわしい大きさで
子どもは、本当のよろこびと、義務感からの応援をちゃんと見分けます。ほめことばがいちばん届くのは、正直で、その場に合っているときです。ちょっとした毎日のことには、小さなひと言を。本当にがんばってやりとげたことには、本当のあたたかさを。何でも同じように大はしゃぎでほめるのは、できるだけ避けましょう。コップに水をそそいだだけで「すごーい!」と言っていると、本当にすばらしいことが起きたとき、そのことばにはあまり重みが残りません。大きな反応は、それにふさわしい瞬間のためにとっておきましょう。それが、ほめことばの意味を守ります。
ふつうのこと、見えにくいことに気づく
ほめるのは、何かをなしとげたあとだけではありません。いちばん価値のある励ましのなかには、気づかれずに流れてしまいそうな人柄やがんばりに目を向けるものがあります。きょうだいへのやさしさ、待つときのがまん、言いにくいことを正直に言えたこと、新しいことにやってみたこと。こうした静かなことに気づくとき、親が本当に大事にしているものが子どもに伝わります。それはたいてい、いちばんになることや、早くできることよりもずっと大きなものです。こうした目の向け方は、子どもが何をつくるかだけでなく、どんな人になるかを形づくっていきます。
つながりにも、仕事をしてもらう
すべてにことばのラベルをつける必要はありません。あたたかい笑顔、いっしょに味わう誇らしさ、子どもがつくったものをいっしょに楽しむこと。それが、どんなことばより多くを語ることもあります。絵を見せに来た子は、点数より、興味をもってそばにいてくれることを求めていることがよくあります。「どんな絵か教えて」「たくさんの色を使ったね」はつながりとふり返りを招きますが、「きれいだね、上手」はその場を閉じてしまいます。本気で興味をもつこと自体が、力強い励ましなのです。
子どもを動かすためのほめ方に気をつける
ほめことばを、ふるまいをコントロールする道具として使うのには気をつけたいところです。「ごはんを食べて、いい子だね」や、言うことを聞かせるためにばらまくほめことばです。子どもは、自分の中の羅針盤を育てるより、ほめてもらうために演じるようになることがあります。励ましがいちばん生きるのは、親の望みどおりにしたごほうびではなく、心からの感謝を映しているときです。めざすのは、「えらいね」と言われるからではなく、そうするのが自分にとって正しいと感じるから、よいふるまいをする子です。
もう少し注意して見たいとき
ほめ方の悩みは、たいてい、どうすればうまくできるかという話です。でも、正しくやることにいつも以上に不安そう、小さなまちがいや注意で大きく落ちこむ、ほめられないと何も楽しめない、自分には価値がないという感じがずっと続いている、という様子があれば、地域の保健師さん、かかりつけ医、園や学校に気軽に話してみましょう。何が起きているのかをいっしょに考え、支えてくれます。何か気になる、という感覚を信じるのは、いつだって筋の通ったことです。
長く大切にしたいこと
これは、あたたかさをけちることでも、ほめることを技術の練習にすることでもありません。親の励ましが、本当に子どもの栄養になるようにすることです。ほめすぎずに具体的にほめるとき、親は子どもが、ラベルよりがんばりを大切にし、自分の伸びに満足を見つけ、ずっと拍手を浴びていなくてもゆるがない自信を育てる手助けをしています。その内側のしっかりした強さは、親のことばが贈れる最高のもののひとつです。
ポイント: 子どもが実際にしたことをことばにし、決まった性質ではなく、がんばりをほめましょう。それが、本物の、長続きする自信を育てます。