子どもに謝ると親の威厳がなくなる?上手な謝り方
「親が子どもに謝ったら、立場が弱くなる」「なめられて、言うことを聞かなくなる」。そんな心配から、なかなかごめんねが言えない親は少なくありません。気持ちはよくわかります。でもその心配は、親の本当の威厳がどこから来るのかについての、ちょっとした思いちがいの上にあります。威厳を保ったまま子どもに謝ることは、矛盾ではありません。きちんとした心からの謝罪は、子どもの尊敬をけずるどころか、深めてくれます。
親の威厳は、どこから来るのか
親の本当の威厳は、決してまちがえないことから生まれるのではありません。信頼できること、ぶれないこと、公平であることから生まれます。子どもは、一度もまちがいを認めない親を尊敬はしません。そもそも、子どもにはお見通しなのです。子どもが尊敬するのは、自分のまちがいもふくめて正直な親です。必要なときにきちんと謝ると、公平のルールは親にも当てはまるのだと伝わり、親のリードが気まぐれではなく筋の通ったものに感じられます。正直さは親を弱くするどころか、威厳のいちばん深い源のひとつです。
きちんとした謝罪が教えること
親が本当のごめんねを言うたびに、子どもはお説教からは決して得られない、生きた授業を受けています。誰でもまちがえること、まちがいを認めるのは強さであること、まちがいは正せること。そして、謝りかたそのものも学びます。目の前で親がお手本を見せているからです。「今のはお母さんがまちがってた」と言える親に育てられた子は、自分も同じことを言いやすくなります。親の立場を少しも損なわずに、その場で心が育っているのです。
謝罪は、すっきりと
自分の立場をくずさずに謝るコツは、正確さです。自分の分の責任を、自分の分だけ引き受けます。ふたつの言い方をくらべてみましょう。にごった謝罪は「どなってごめん。でも、あなたがいつも話を聞かないから、いらいらするの」。すっきりした謝罪は「どなってごめんね。あれはよくないやり方だった」。すっきりしたほうは、子どものせいにせず、約束ごとを取り消すこともなく、自分のふるまいだけを認めています。謝るのは、自分のふるまいについて。子どもに求めていることについてではありません。
ふるまいと、約束ごとを分けて考える
ここがいちばんの要です。約束ごとの守らせ方は謝っても、約束ごとそのものはしっかり残せます。たとえば、
- 「きつい言い方してごめんね。でも、もう寝る時間なのは変わらないよ」
- 「タブレットを取りあげるみたいにしてごめんね。でも、今日の動画はおしまいだよ」
- 「部屋の向こうからどなったのは、よくなかったね。積み木のお片づけは、やっぱりしようね」
謝っているのは、伝え方です。求めていることは、そのまま。子どもはその公平さを感じとります。そして大事なのは、親がまちがいを認めても枠組みはくずれないので、子どもが安心していられることです。
謝りすぎない
健やかな謝罪と、不安から何度も平謝りすることには、はっきりした違いがあります。しょっちゅう謝る、子どもに「いいよ」と言ってもらおうとする、罪悪感で崩れてしまう。こうした謝りすぎは、子どもを落ち着かなくさせ、誰が舵を握っているのかをあいまいにします。子どもがいちばん安心するのは、大人が落ち着いて、場をあずかっているとき。それは大人がまちがいを認めている最中でも同じです。心をこめて、でもさらりと謝り、あたたかく次に進みましょう。見せたいのは、まちがえても、認めて、ぐらつかずにいられる姿です。まちがいは大惨事だ、という姿ではありません。
タイミングを選ぶ
謝るのは、本当に落ち着いてからにしましょう。かっとしている最中だと、ことばがもつれたり、うらみがましくなったりしがちです。静かなときを選び、子どもの目の高さまでかがんで、シンプルに、あたたかく話します。長く、大げさな場にする必要はありません。おだやかなときの短い心からのひと言は、けんかのさなかに投げる急いだ謝罪よりずっと重みがあります。落ち着いたタイミングは、親の威厳も守ってくれます。あわてた罪悪感ではなく、どっしりした場所から出たことばだからです。
年齢に合わせたことばで
小さな子なら、短いことばと抱っこでじゅうぶんです。「ママ、怒りすぎちゃった。ごめんね」。もう少し大きな子なら、何をしたのか、なぜよくなかったのか、次はどうしてみるのかまで話せます。発達に合った内容にしましょう。懺悔をするのではなく、その子がわかって、学べる、正直で年齢にふさわしい説明をするのです。
謝罪が本当の問題ではないとき
ときどき謝るのは、家族の暮らしのふつうの一部です。でも、しょっちゅうかっとなってしまうせいで謝ってばかりいる、あるいは、いつもいっぱいいっぱい、気分が落ちこむ、子どもの前で落ち着いていられない、という状態が続くなら、謝罪そのものより先に向き合いたいことがあるサインです。かかりつけ医や地域の保健師さん、自治体の子育て相談の窓口に話してみましょう。くり返すパターンに手助けを得ることは、思いやりのある、責任ある一歩です。親子の関係も、親自身の心も守ってくれます。
今、育っている尊敬
ごめんねと言える親に、弱さなどありません。むしろその反対です。しっかりと線を引き、公平にまちがいを認められる人に育てられた子は、強くて人間らしいリーダーのお手本を持って大人になります。威厳を保ったまま子どもに謝るとき、親は自分の役目を手ばなしているのではありません。本当の威厳がどんなものかを見せているのです。正直で、公平で、人間らしく、ハンドルからは決して手を離さずに「今のはまちがってた」と言えるだけの、ゆるがなさ。
ポイント: 自分のふるまいを認め、約束ごとは残し、落ち着いて。すっきりと、よいタイミングでの謝罪は、親の役目をくずすどころか、尊敬を深めます。