親子でぶつかったあとは、遊びで仲なおり
子どもとぶつかったあと、主導権争い、かんしゃく、意地の張りあいのあと、空気はなかなか軽くなりません。ふたりともぴりぴりして、少し身がまえて、どうやってあたたかさに戻ればいいのかわからない。ここでは、ことばがうまく働かないことがよくあります。小さな子は、体がまだ身がまえているうちは、落ち着いた話しあいを受けとめにくいからです。そこで光るのが、意外な道具、遊びです。遊びで仲なおりする方法を知っていると、こんがらがった気持ちをすりぬけて、子どもの母国語で語りかけながら、近さへ戻る道ができます。
話がだめでも、遊びが届くわけ
遊びは、子どもの母国語です。遊びを通して世界を消化し、緊張をほどき、安心を感じます。ぶつかったあとの子は、つらい気持ちでいっぱいになっていて、筋の通った会話にはとても手が届きません。遊びは、ことばの届かないところまで届きます。いっしょにふざける一瞬が、ふたりの体の緊張をほどき、「わたしたちは同じチームだよ」という感覚を取りもどし、うまくいかなかったあとも自分は愛されているのだと子どもに思いださせます。笑いとつながりは近い親せきで、片方がくると、もう片方もかならずついてきます。
お説教より、軽やかさを
ぶつかったあとは、主導権を取りもどしたい、何が悪かったのかわからせたい、と思うものです。代わりに、やわらかくなってみましょう。遊び心のあるあたたかい声のほうが、きっぱりした声よりずっと早く、気持ちの温度を下げます。遊び心をもつことは、困った行動を見のがすことではありません。何かを学ぶ前に必要な、つながりを建てなおしているのです。親と近くにいると感じる子は、声かけにも応じやすくなります。だから、つながりなおすことは、しつけの反対ではなく、しつけを可能にするものなのです。
遊びでドアを開けなおす、かんたんな方法
もともとおどけるのが得意な人でなくても大丈夫です。ちょっとした、ひかえめな遊び心で、空気は変わります。
- やさしく大げさにふざける。わざとつまずくふりをする、名前をおもしろくまちがえる。
- 軽い追いかけっこや、「つかまえた!」と抱きしめる遊びを始める。
- おとぼけ役になる。自分の靴をはくのに、大げさに苦戦してみせる。
- 用事を遊びにする。お片づけ競争、おもちゃに「しゃべらせる」。
- 子どもが好きなら、笑いいっぱいの、やさしいじゃれあい。
めざすのは、起きたことから気をそらすことではなく、凍った空気をとかして、つながりと、必要ならあとでの話しあいが、また流れるようにすることです。それが、遊びで仲なおりすることの芯です。
もう一度、強い自分を感じさせる
ぶつかりあいのあと、子どもはたいてい、自分が小さくて、しかられて、どうにもできないと感じています。それがまさに、やわらげたい行動の燃料になります。子どもが強くて、できて、えらい役になれる遊びは、それをそっといやしてくれます。おすもうごっこで「勝たせて」あげる、追いかけて、みごとに逃げきられる、しばらく子どもがボスになれる遊びをする。遊びの中で害のない力を渡すと、反抗の原動力になっている無力感が少しほどけ、子どもは負けた気持ちではなく、できる自分を感じながら親のもとに戻ってこられます。
子どものサインを読む
遊び心は道具であって、魔法ではありません。タイミングが大切です。かんしゃくの真っただ中の子は、たいていまだ遊びを受けとれず、まず落ち着きと距離が必要なことがあります。嵐が過ぎはじめる瞬間、泣き声がおさまってきたり、こちらをちらっと見たりしたときを待って、そっときっかけをさしだしましょう。最初の遊びのさそいをはねのけられても、無理じいはしません。待って、あたたかいままでいて、しばらくしてまた軽くためしてみます。子どもの準備ができるのについていくことも、上手にやるための一部です。
遊ぶことは、問題を無視することではない
大切なバランスがあります。遊びでつながりなおすことは、何もなかったふりをすることでも、約束ごとを捨てることでもありません。まず関係を取りもどして、どんな話しあいも凍った地面ではなく、あたたかい地面に着地できるようにすることです。つながりなおして落ち着いたら、必要に応じて、何があったのかを短いことばでふり返ってもいいですし、その出来事がもう教えるべきことを教えたなら、そのまま流してもいいのです。まずつながり、正すのはあと。そしてたいてい、正すことは心配していたよりずっと軽くてすみます。
遊びがまた、ぶつかりに戻ってしまうとき
遊びでのつながりなおしは、たいてい空気をなめらかにしてくれますが、もっと大きなパターンには気をつけておきましょう。遊びをまったく楽しめない様子、ほとんどいつも乱暴かつらそう、落ち着いているときでもぶつかったあとにまったく気持ちがおさまらない、ぶつかりあいがひんぱんで激しく、ふたりともすり減っている、という場合は、地域の保健師さん、かかりつけ医、園や学校に話してみましょう。続く深刻な行動の困りごとには支えが必要で、早めに助けを得ると、家族みんなの暮らしがやさしくなります。相談するのは筋の通ったことで、大げさではありません。
笑いの下にある、やりなおし
ただのおふざけに見えるものが、その下で大事な仕事をしています。遊びで仲なおりするたびに、親は子どもに教えています。関係はでこぼこを乗りこえられること、自分を見うしなったあとも愛されていること、嵐のあとにはあたたかさが戻ってくること。小さな人にとって、それは深い安心です。けんかの中身をすっかり忘れたずっとあとも、子どもはもっと深い学びを持ちつづけます。この人とはけんかしても、笑いに戻ってこられる。安心で、愛されている、と。
ポイント: ぶつかったあとは、やさしい遊び心で緊張をとかし、あたたかさを取りもどしましょう。何かを教えるのは、つながりが戻ってからです。