朝のバタバタでも、子どもと心をつないで送りだすには
園や学校に行く前の朝は、毎日の障害物競走のようです。ごはんを食べさせ、歯をみがき、消えた靴を探し、かばんの用意をし、そのあいだも時計は止まってくれません。ばたばたの中で、まっさきに消えていくのはあたたかさで、くたびれて、ちょっと罪悪感をかかえながら子どもを送りだす親は少なくありません。でも朝は、その混乱から想像するよりずっと大切な時間です。朝のばたばたの中でも子どもとつながっていられると、子どもの一日の始まり方が変わり、ばたばたそのものもなめらかになることがよくあります。
朝が一日の調子を決めるわけ
朝、どんなふうに親と別れたかが、子どもがその日を見るレンズの色を決めます。小言、きつい声、急いで味気ないさよならのあとに出かけた子は、その落ち着かない気持ちをクラスへ持ちこむかもしれません。つながっていて愛されていると感じて出かけた子は、その日を乗りきり、集中し、友だちと仲よくする準備がととのっています。これは、絵に描いたようなおだやかな朝を実現する話ではありません。そんな朝を迎えられる家族はほとんどいません。急ぎの中でもあたたかさの糸を一本守って、子どもが安心して一日を始められるようにする話です。
つながっていると、動いてくれやすい
ここに実用的なごほうびがあります。朝のぐずぐず、いや、靴下ひとつでのかんしゃく。その多くは、急かされ、命令され、つながれていないと感じている子が燃料になっています。まず少しつながる時間をとると、つながりたい気持ちがふみつぶされずに満たされるので、ずっと協力的になる子はたくさんいます。つながりは、ゆとりのある日にだけできるぜいたくではありません。みんなをいちばん早く玄関から出してくれるのも、つながりであることが多いのです。朝のばたばたの中でつながることは、多くの場合、朝を短くすることでもあります。
一日の始まりは、指示より、あたたかさで
一日の最初のやりとりには、重みがあります。子どもがその日最初に受けとる親の姿が、どなるような指示の列だと、朝は出だしからつまずきがちです。最初の瞬間だけは、段取りではなくつながりのために使ってみましょう。あたたかい「おはよう」、抱っこ、一日のエンジンがかかる前に、ちょっとその子に目を向けること。うまくいきやすい小さなきっかけです。
- やさしいひと言と、くっついての、ゆったりした目ざめ。
- ばたばたが始まる前に、1分いっしょに座る。
- ちょっとしたおふざけや、お気に入りの歌。
どれも時間はほとんどかかりません。そして、朝の残りが乗っていける、よい調子をつくってくれます。
前の晩に準備しておく
朝のぶつかりの多くは、実はつながりの問題ではなく、時間に追われることが空気を悪くしているせいです。多くの家族にとっていちばん効くのは、用事を夜に回すこと。服を出しておく、かばんや園の荷物をつめる、靴をそろえる、できることは前の晩に用意する。そうすれば、親をきつくさせ、子どもをかたくなにする、必死のばたばたがなくなります。落ち着いて準備のととのった朝には、急いでぴりぴりするかわりに、本当にあたたかくいられるだけの余力が残ります。準備とつながりは、静かにつながっているのです。
さよならは、愛情をこめて
どんなにでこぼこな朝だったとしても、さよならだけはしっかり守る価値があります。子どもがその日に持っていく音色だからです。それまでに何があっても、別れのときにはリセットしましょう。目の高さまでかがんで、目を見て、本当のあたたかさと「大丈夫」という気持ちで送りだします。抱っこ、やさしいひと言、ふたりのおなじみのことば。いつもの手のふり方、とくべつなタッチ、「いってらっしゃい、楽しんでね」といった小さなさよならの習慣があると、不安になりやすい子にも、門をくぐるときにぎゅっとにぎれる、確かな安心の瞬間ができます。
気持ちの温度を下げる
ストレスをかかえた親と、のんびりした子がぶつかって、おたがいにゆずらなくなると、朝はあっというまにヒートアップします。小言やきつい声になりそうだと感じたら、もっと押すより、少し間をおいて自分の声のトーンを整えるほうが効くことがよくあります。ここでは遊び心が救世主になります。着がえ競争、ぬいぐるみに靴をはくのを「手伝って」もらう、へんてこなカウントダウン。何度も言うより早く、動けなくなった子が動きだすことがあります。空気を軽く保つと、時間割もつながりも守れます。このふたつは、たいていいっしょに上がったり下がったりするのです。
必要なら、出がけにやりなおしを
どんなにがんばってもうまくいかない朝はあります。それはふつうのことです。きつく当たってしまった、さよならがよそよそしかった、という日でも、まだつくろえます。別れぎわの短いあたたかいひと言、かばんにしのばせたメモ、「帰ってきたら、ぎゅってしようね」という約束。どれも、出だしがでこぼこでもきずなはこわれていないと、子どもに伝えます。大変な朝ひとつで、何かをこわしてしまったと思いこまないでください。あたたかさの確かなパターンがあれば、たまの悪い日はかんたんに受けとめられます。
朝の様子が、もっと大きなことのサインのとき
ふつうのしぶりや慌ただしさは、家族の暮らしの一部です。でも、何週間も、園や学校に行くことをずっとひどくいやがる、出かける前に不安、おなかの痛み、涙が続く、いつも元気がなく、楽しくなさそうにしている、という場合は気にかけてあげましょう。本当に離れるのがつらい、園や学校をずっとこわがっている、という様子があれば、園や学校の先生にやさしく相談し、必要ならかかりつけ医や地域の保健師さんにも話してみてください。早めの相談は役に立ちますし、深刻になるまで待つ必要はありません。
一日を運んでくれる糸
おだやかでつながった朝を毎回つくりだすことはできませんし、そうでなくていいのです。めざすのは、急ぎの中でもあたたかさの糸を一本守ることだけ。やさしい「おはよう」、途中で少しそばにいること、そしてあたたかい「いってらっしゃい」。朝のばたばたの中でもつながっていられるとき、子どもは心をささえてくれるものを持って出かけます。愛されているという実感が、一日じゅう、そっと子どもといっしょに旅をするのです。
ポイント: やさしい「おはよう」、前の晩の準備、あたたかい「いってらっしゃい」で、急ぎの中でもあたたかさの糸を守りましょう。つながりは、朝そのものもスムーズにしてくれます。