文字のない絵本の楽しみ方

絵だけで文字のない絵本は、親にはなぞなぞのように見えるかもしれません。何を読めばいいの?答えは、親子でいっしょにおはなしをつくる、ということ。それこそが、こうした本の価値なのです。使い方がわかると、文字のない絵本は、棚のなかでいちばんゆたかな道具のひとつになります。

文字のない絵本が役立つ理由

決まった文がないので、文字のない絵本は、話すことを大人と子どもの手にゆだねます。その自由が、静かにたくさんのいいことをしてくれます。子どもは絵をじっくり見て、何が起きているかを考え、登場人物の気持ちを推しはかり、次に来るものを予想します。どれも、のちの読むこと書くことを支える、考える力とことばの力そのものです。

文字のない絵本は、どの家庭にもやさしい本です。日本語以外のことばのほうが話しやすい家庭でも、まだ読むことに自信を育てている最中でも、関係ありません。どのことばでも、自分のことばで、自分のレベルで語れます。ページの上に、つまずくものは何もありません。

まずは、ただ見る

語ることを急ぐ必要はありません。本を開いて、ただいっしょに見ましょう。子どもの目と、指さす指に案内してもらいます。表紙に気づき、最初の見開きに気づき、声に出してふしぎがる。「これはだれ?どこへ行くのかな?」。こたえる時間をあげて、どんなこたえも正解として受けとめましょう。文字のない絵本には、ひとつの正しい読み方はないからです。

上手に使うコツは、1ページずつ行進するのではなく、子どもの注目についていくことです。小さな子がすみっこの犬に夢中なら、犬の話をしましょう。大切なのは会話で、全部の絵をうめることではありません。

ひらいた質問をして、こたえを広げる

ひらいた質問は、はい、いいえの質問より、ずっとおはなしを誘います。試してみましょう。

  • 「ここでは何が起きてる?」
  • 「この子、どんな気持ちだと思う?」
  • 「ページをめくったら、どうなるかな?」
  • 「どうしてそうしたんだと思う?」

子どもがこたえたら、少し足しましょう。「わんわん、かなしい」と言ったら、「そうだね、わんわん、かなしそうだね。ボールをなくしちゃったのかな。どこに行ったんだろう」。このやさしい広げ方が新しいことばをあげ、その瞬間をテストにせずに、考えをおはなしにのばす方法を見せます。

子どもにリードさせる

いちばんいいことのひとつは、語り手の役をゆずることです。2、3歳から幼児期の子は、大人に絵を「読んであげる」側になるのが大好きです。おはなしを語ってもらい、はじめて聞くように耳をかたむけましょう。大人が見のがしたところに気づいていて、驚かされるかもしれません。語り手になることで、自信、順番に並べる力、話しことばがいっぺんに育ちます。

語りなおすたびにちがうのは、欠点ではなく長所です。同じ文字のない絵本が、ある日は楽しいおはなし、次の日はこわい冒険になる。どの語り方も、子どもが想像し、選ぶ練習をしています。

何度も読んで、おはなしを育てる

文字のない絵本は、何度ももどるほどこたえてくれます。はじめは見えるものの名前を言うだけ。やがて子どもは気持ち、理由、せりふを足し、さらにあとにはページをつないで、なめらかで順番のそろったおはなしにします。本全体を通してひとりの登場人物の旅に注目したり、お気に入りのページを演じたりすれば、新鮮なまま楽しめます。

台本にしばられないので、こうした本は子どもといっしょに育ちます。1歳6か月(18か月)のころは「おおきいわんわん、ちいさいわんわん」だった本が、4歳になると細かい冒険を運べるのです。

文字のない絵本の選び方

はっきりした絵で、できごとの流れがわかりやすく、表情がゆたかで、子どもの世界に近い題材の本を探しましょう。ひとつのシンプルなおはなしをページを通して語る本もあれば、さがす楽しみのある細かいところがぎっしりの、にぎやかな場面の本もあります。どちらも役に立ち、まぜると楽しさが続きます。まだ本をあらく扱う小さな子には、じょうぶなものが合います。

よくあるつまずき

たよれる文がないと不安になり、「やり方がちがうのでは」と心配する親もいます。まちがったやり方はありません。絵について話すことは、何でも役に立っています。ことばにつまったら、見えたものをそのまま言うだけでじゅうぶんです。「男の子。赤いボート。水がいっぱい」。

急ぐことも、よくあるわなです。文字のない絵本は、子どもが考えて話せる間をとりながら、ゆっくり進むのがいちばん。子どもがページを見つめているあいだの沈黙は仕事をしているので、急いでうめたくなってもこらえましょう。

相談したほうがいいとき

文字のない絵本を楽しむか見向きもしないかだけでは、ほとんど何もわかりません。全体として、1歳6か月(18か月)ごろになっても興味を分かちあう指さしがめったにない、3歳ごろになっても二語文が出ない、年齢から考えて思うように絵についていけないように見える、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に伝えましょう。これらはことばと発達のおおまかな目安で、警報ではなく、やさしく伝えています。

覚えておきたいこと

文字のない絵本を楽しむには、ゆっくりにして、いっしょに見て、ひらいた質問をし、語り手の役を子どもにゆずりましょう。正しく読むべき決まった文がないからこそ、この本はたくさんの会話と考える力と自信を育てます。自分のやり方で、どのことばでもおはなしを語り、毎回変わっていくのを楽しんでください。

ポイント: 決まったことばがないから、文字のない絵本は親子でおはなしをつくれます。子どもについていき、ひらいた質問をし、語り手をまかせましょう。

NHS, Learning to talk (Start for Life)

UNICEF, How reading and storytelling boost early development