絵本がなくてもできる、おはなしの語り方

子どもが聞くいちばんすてきなおはなしのいくつかは、ページから生まれるものではありません。車の中、行列、寝る前の暗がりで、その場でつくる大人の口から生まれます。絵本なしのおはなしは、すばらしい作家になることではありません。手はふさがっていても声は自由な、毎日の瞬間を使うことです。

つくったおはなしが大切な理由

見る本なしでおはなしを語ると、子どもはすべてを自分で思いえがかなければなりません。その想像する働きが、ことば、記憶、創造力を育て、それは家じゅうでも外の世界でも、ずっとついてきます。語るおはなしは家族の声、ユーモア、大切にしていることを運び、子どもが自分のおはなしを語りはじめるためにまねできるお手本にもなります。

実用的なおまけもあります。頭の中に持っているおはなしは、いつでも使えます。かばんも画面も「しーっ」もいりません。本に手が届かない、まさにその瞬間にぴったりです。

知っているおはなしから

何もないところからつくる必要はありません。いちばんかんたんな入り方は、なじみのおはなし、昔話、子どもの好きな映画、大人自身の子どものころの思い出を語りなおすことです。ひとつだけ変えて、わが家のものに。「三びきのこぶた」の舞台を家の近所にしたり、おおかみが子どものおもちゃをこわがることにしたり。語りなおしならプレッシャーがなく、語るおはなしのよさはまるごと手に入ります。

家族のおはなしもすばらしい材料です。子どもは自分が赤ちゃんだったころの話や、おじいちゃんおばあちゃんのおもしろい話を聞くのが大好き。こうした本当のおはなしも立派なおはなしで、家族の一員だという気持ちを強めてくれます。

らくに語れる、かんたんな形

頭のなかの白紙がこわく感じたら、かんたんな形にたよりましょう。

  • むかしあるところに、困ったことが起きて、それが解決する。登場人物が何かをほしがり、つまずき、のりこえる。
  • 子どもを主人公に。勇かんな子どもが冒険に出て、みんなを助ける。
  • 子どもがいっしょにとなえられる、くり返しのことばを入れる。「ぴょんぴょんぴょん、と出かけていきました」。
  • 「それから、どうなったと思う?」と聞いて、すじは子どもにまかせる。

こうした形が絵本なしのおはなしの背骨になり、こわい白紙を、すきまをうめる遊びに変えてくれます。

子どもといっしょにつくる

いちばんゆたかなおはなしは、ペンを分けあうときに生まれます。おはなしを始めて、止まる。「こぎつねがドアを開けると、そこには……何があったと思う?」。子どもが何と言っても、たとえバスに乗ったむらさきのぞうでも、織りこみましょう。こうして交代すると、想像力と「自分のもの」という気持ちが育ち、大人の手間も軽くなります。

子どもに材料を3つ決めてもらうのもいい方法です。りゅう、なくしたくつ、誕生日ケーキ、などを入れて、いっしょにおはなしを組みたてる。おばかでいいのです。笑いが、みんなをまたおはなしへ呼びもどします。

その時間に合うおはなしを

一日の時間によって合うおはなしはちがいます。車での移動なら「それから」の多い長い冒険を。行列には2分をすごせる、短くておかしいものを。お風呂には水、船、海の生きものが出てくるおはなしがぴったりです。

寝る前は特別です。どきどきして目がさえる、続きが気になるおわり方ではなく、おだやかでやさしいくり返しのある、ほっとするおわりのおはなしに。ねむたい動物がふとんに入るまでの、ゆっくりしたなじみのおはなしは、寝る前の落ちつく流れの、大切な一部になります。

小道具は、あってもなくても

声だけでじゅうぶんですが、アイデアが出ない日には、小道具がきっかけになります。ぬいぐるみふたつが登場人物に。手がおしゃべりする小さな生きもの2匹に。ふとんの中の懐中電灯で、ふつうの寝る前のおはなしが特別なイベントに。どれも必要ではありませんが、ひらめきがかれたときの助けになります。

よくあるつまずき

「わたしは創造的じゃないから」という思いで、始める前にやめてしまう親はたくさんいます。そうである必要はありません。語りなおし、家族の思い出、かんたんな3つの部分の形が運んでくれますし、子どもは批評家ではなく、あたたかい聞き手です。

みがきあげた完ぺきなおはなしをめざすのも、わなのひとつ。子どもはすじのあなも、さまよう結末も気にしません。傑作よりずっと、大人の声と注目がほしいのです。続けるほど、すらすら出てくるようになります。

相談したほうがいいとき

おはなしをつくるのはすてきなおまけで、何かのテストではありません。いつものように、もっと広い心配、たとえば会話や遊びにめったに加わらない、新しいことばが思うように増えない、大人の声がはっきり聞こえていないように見える、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に伝えましょう。これらはことばと聞こえの一般的な目安で、やさしく伝えています。大人のおはなしがたりなかったと感じる理由には、決してなりません。

覚えておきたいこと

絵本なしのおはなしは、もうある瞬間を使い、シンプルに保つことに尽きます。お気に入りを語りなおし、子どもを冒険のなかへ、語るのは分けあって、おはなしを一日の時間に合わせる。声と想像力はいつも持ち歩いているので、いちばん手軽なおはなしの道具です。

ポイント: 絵本も才能もいりません。必要なのは声だけ。お気に入りを語りなおし、子どもを主人公にして、次に何が起きるか子どもにも決めてもらいましょう。

UNICEF, The power of storytelling for young children

NHS, Help your baby learn to talk