同じ絵ばかり描くのは、だいじょうぶ?
何週間も、同じ虹、同じねこ、同じ家の列ばかり描いていて、何かおかしいのかなと思いはじめていませんか。よくある心配で、無理もないことです。でもほとんどの場合、同じ絵をくり返し描くのは直すべき問題ではなく、子どもが一生けんめい取りくみ、自分にいちばん合うやり方でひとつの考えを身につけているしるしです。
くり返しは、力を身につける方法
小さな子はくり返して学びます。同じ絵本を100回読んでとせがんだり、同じ坂を何度もかけおりたりするように、同じ絵を描いて練習し、みがいていきます。描くたびに線を整え、思いどおりにできる感覚を強め、うまくできることがある安心を味わっています。行きづまっているどころか、同じ絵をくり返す子は、力を深め、本当に身についたときの自信を育てていることが多いのです。
くり返す絵の意味
同じ絵にもどるのには、やさしい理由がたくさんあります。動物や乗り物など大好きなもので、描くことそのものが楽しい。人や太陽のような、やっと描けるようになったしるしで、うまく描けるのを楽しんでいる。心にあることを整理する方法になっている。同じ絵をくり返し描くとき、題材はたいてい、その子の興味や世界や気持ちを映していて、くり返すことがそれを探る方法なのです。
ちがう物を描かせようとしない
新しいものへ導きたくなりますが、押しても役に立つことはめったになく、自信をくじくこともあります。「ほかのを描いたら」と言うと、お気に入りはよくないと伝わってしまい、望んでいることの正反対です。子どもは、じゅうぶん探りつくしたと感じたら、自分のタイミングでくり返しの絵から次へ進みます。その流れを信じましょう。虹の時期は、大人が決めたときではなく、子どもの準備ができたときに終わります。
導かずに支えるには
好きなものを否定せずに、子どもの世界をやさしく広げることはできます。いつもの材料にチョーク、絵の具、コラージュなど新しい材料をそえて、なじみの絵を新しいやり方でつくらせてみましょう。絵本を読み、いろいろな場所に出かけ、新しいことを話せば、時間とともに新しい考えがしぜんにお絵かきに流れこみます。材料と体験を用意したら、何を描くかは子どもが決める。指示より、ひらめきのほうがずっと効きます。
小さな変化に気づく
よく見ると、くり返しの絵が毎回まったく同じということはめったにありません。細かいところを足す、新しい色を試す、ねこを大きくする、ちがう場所に置く。こうした小さな変化は、なじみの枠のなかで確かな発達が起きていることを示しています。ほめるのではなく興味をもって指さすと、子どもは励まされます。「今日の虹は色がひとつ多いね」「おうちにドアができたね」。そのままの探り方を大切に思っていることが伝わります。
好奇心をもって話す
どうしていつも同じ絵なのかと問いただすのではなく、その絵に本当の興味を示しましょう。絵のこと、そこで何が起きているか、何を足すかを話してもらいます。子どもの選択を大切にし、ことばとおはなしの力を育て、ときにはプレッシャーなしに新しいアイデアへの扉をそっと開けます。直すのではなく好奇心のある会話なら、お絵かきは安心できる楽しい場所のままで、必要なだけくり返せます。
もう少し見ておきたいとき
ほとんどの場合、くり返しのお絵かきはまったく健やかで、何もする必要はありません。ただときには、全体のようすとあわせて気にかけておく価値があります。くり返す絵がつらいことを映しているようで子どもが苦しそうなとき、または、以前できていたことができなくなった、遊びやコミュニケーションがめだって減った、どんな変化にもとても強く動揺する、ひきこもっているように見える、といったほかの変化をともなうときは、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に伝えるのが賢明です。大切なのは、絵だけでなく全体のようすです。
くり返しを、広い目で
くり返しのお絵かきそのものは、発達のふつうで前向きな一部で、何週間も同じ絵を描く子のほとんどは、ただ楽しみ、身につけているだけだと覚えておきましょう。心配がいるのは、くり返しが気になる変化の広い流れのなかにあるときだけです。ほかでは遊び、人とつながり、学び、だいたい満ちたりているなら、大好きでくり返す絵は何も心配いりません。ひとつの習慣だけを切りとるのではなく、子ども全体に見えるものを信じましょう。
極めていることを喜ぶ
同じであることを限界と見るのではなく、子どもが何かの名人になりつつある証拠と見ることもできます。何かをうまくできることには心からの誇りと満足があり、子どもはくり返す絵のたびにそれを味わっています。それを大切にし、材料をいつも出しておき、興味をもちつづけることで、そのままのつくり方が歓迎されていると伝わります。それが、楽しさのために描きつづけるいちばん確かな方法です。
安心してほしいこと
同じ絵をくり返し描くのは、ほとんどいつも、子どもが学び、つくることを楽しむうえでの健やかで意味のある一部です。新しい材料や体験を用意して支え、くり返しのなかの静かな変化に気づき、心配は絵そのものではなく子どもの全体的な元気さに向けましょう。やがて、その子なりのやり方で、次に心をつかまれるものへと進んでいきます。
ポイント: 同じ絵をくり返し描くのは、たいてい好きなことを身につけているところ。ちがう物を求めずに支え、心配するのは、ほかに気になる変化が重なるときだけに。