道具はほとんどいらない。外でのごっこ遊び

いちばんいいごっこ遊びの小道具は、買ったものであることはめったにありません。棒は、魔法のつえにも、スプーンにも、つりざおにも、刀にも、マイクにもなります。芝生の一角は、嵐の海にも、ドラゴンのすみかにも、お店にも、キャンプ場にもなります。子どもは頭の中に劇場をまるごとかかえていて、外はそれに、どこまでも自由な舞台を手わたしてくれます。おもちゃの戸棚がいっぱいでなくても空想遊びを育てられるか気になっていたなら、正直な答えは、ほとんど何もいらない、です。

外での空想遊びが、こんなに豊かなわけ

ごっこ遊びは、変装した、まじめな発達の仕事です。ごっこ遊びをしているとき、子どもはことばを練習し、役割を話しあい、実際の場面を予行演習し、気持ちを整え、想像力をのばしています。外ですると、動きまわる広さ、別のものに見立てられる自然の材料、家の中より少ない決まりが加わって、遊びがほどけて、いちばんいい意味でのびのびと広がっていきます。外でのごっこ遊びのいちばん力強いアイデアのいくつかは、いちばん道具の少ないものです。遊び方が決まっていないものは、ひとつにしかなれないおもちゃより、ずっと多くの発明を引きだすからです。

キャラクターもののプラスチックのおもちゃは、たいてい、自分が何で、何をすればいいかを子どもに教えます。棒は何も教えません。だからこそ、なんにでもなれるのです。これは道具の少ない家族のための妥協ではありません。想像力にとって、本当にこちらのほうがいいのです。

自然のものを小道具に

まわりを見わたして、ありふれたものの可能性に目を向けてみましょう。棒は、つえ、道具、人、さかいめ、建築材料。石は、食べ物、宝物、お金、卵、登場人物。葉っぱは、お皿、毛布、きっぷ、葉っぱのおはなしの葉っぱ。丸太は、ふね、橋、お店のカウンター、ベッド。長い草はジャングル、水たまりは海、しげみはおうち。大人が意味を決める必要はありません。お子さまが、たいてい大人が追いつけないくらいの速さで決めていきます。

大人の役目は、ほとんどの場合、それを許すことです。かしこく安全に気を配ったうえで、棒には「いいよ」と言い、遊びをきれいに整えたくなる気持ちはおさえましょう。お子さまが「この葉っぱの山は、家族みんなの夕ごはんです」と宣言したら、いちばん役に立つのは、芝生にこしをおろして「デザートはなあに?」と聞くことです。

火をつけたら、一歩下がる

遊びにひと押しが必要なら、指示ではなく場面を差しだしましょう。「わたしたちは探検家。新しい星に着いたところ。何が見つかるかな?」「ここはわたしたちのお店。今日は何を売ろうか?」。軽いテーマがあると、はずかしがりの子や、どうしていいかわからない子にも入り口ができ、そのあと、外でのごっこ遊びのいちばんいいアイデアはひとりでに育っていきます。おはなしが動きだしたら、大人が思う方向へかじを切るのではなく、お子さまについていきましょう。

少なくとも最初のうちは、大人がいっしょに遊ぶことが、ためらいがちな子の大きな力になります。役をひとつ引きうけ、遊びのふしぎな理屈を受けいれ、お子さまに監督をまかせましょう。時間がたつと、多くの子はだんだん大人を必要としなくなり、自分だけの世界やほかの子との世界へ、うれしそうに消えていきます。遊びがちゃんと役目をはたしているしるしです。

おはなしを、時間をかけて育てる

ごっこ遊びは、なじむほど深まります。ある日考えだした遊びに次の日ももどってきて、同じ登場人物と決まりで続けるうちに、だんだん豊かでこまかくなっていきます。決まった木が続きものの冒険のいつもの舞台になり、とくべつな石が、行くたびにあらわれる宝物になる。同じ外の場所にもどることで想像の世界がつみかさなり、子どもはそれにとても満足します。

遊びをそっと広げることもできます。解決するべき問題、新しくやってくる登場人物、おはなしが乗りこえなければならない天気の変化。こうした小さな足しものは、お子さまの主導権をうばわずに、集中と発明を長くのばしてくれます。

実際の注意を少しだけ

棒と石には、軽く目を配りましょう。「棒は肩より下」「とがったほうは下に向ける」といったかんたんな約束をして、小石を口に入れそうな小さな子には気をつけます。それ以外のリスクは小さく、得られるものは大きいのです。芝生、泥、天気に合った服を着せれば、お子さまは遊びに思いきり飛びこめます。明るい季節は日かげ、帽子、日焼け止め、水を用意しましょう。

外で想像の世界を動きまわることは、お子さまの毎日の運動にもさりげなく加わります。空想遊びがじっとしていることはめったにないからです。海賊は走り、探検家はのぼり、お店やさんは行ったり来たり。学びと体の動きが、いっしょにただでついてきます。

お子さまについていく

ごっこ遊びが育つ時期は子どもによってちがい、たいていよちよち歩きのころから幼児期にかけて花ひらきます。早くから手のこんだおはなしをつくる子もいれば、長いあいだシンプルなくり返しの遊びを好む子もいて、どちらもふつうです。その子が準備できている以上の複雑さを求めるのではなく、いまの段階についていきましょう。

長いあいだ、ごっこや空想にほとんど興味を示さない、幼児期になってもものを別のものに見立てて使わない、できていたことができなくなってきたように見える、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに気軽に相談してみる価値があります。たいていは安心のためです。それでも多くの子にとっては、棒1本と、芝生の一角と、乗り気な大人がひとりいれば、午後まるごとの冒険に必要な道具はそろっています。

覚えておきたいこと: 小道具はいりません。棒と石には「いいよ」を。必要なら軽い場面を差しだし、あとはかじを切らずに、お子さまのおはなしについていきましょう。

American Academy of Pediatrics, The power of play

UNICEF, Learning through play