子どもと雲を見上げる時間に。想像と気づきを広げる問いかけ
あおむけに寝ころんで空をながめる。家族でできる、いちばん昔からあって、お金がかからず、のんびりできる過ごし方のひとつです。買うものも、行かなければならない場所もなく、まちがえようもありません。小さな子にとって、ゆっくり流れる空は、二度と同じ場面をくり返さない画面のようなもの。となりで大人が静かに問いかけると、その景色が考えること、話すこと、ちょっとしたわくわくに変わります。何かを足すより、引くほどうまくいく遊びです。
空が、こんなにいい教材になるわけ
雲はいつも形を変え、何かになりきることがありません。だから幼い頭にぴったりです。犬に見えた雲がふねになり、やがて消えていく。このあいまいさが贈りものです。待ちかまえている正解がないので、子どもは安心して想像でき、見たものを言いあらわそうとことばをさがします。雲をながめていると大人も子どももゆっくりになれるので、ばたばたした日にはそれだけでも価値があります。
場所と時間をととのえる
準備はほとんどいりません。芝生の一角、レジャーシート、ベンチ、背もたれを倒したベビーカーでもじゅうぶん。あとは空がなにか動いている数分間があればいいのです。風のある日のちぎれ雲は動きも形も豊かで、一面の灰色の空は話題が少なめです。小さな子は首も根気も疲れやすいので、短めにしましょう。そして、だれも太陽を直接見ないように気をつけてください。太陽を見つめると幼い目を傷めることがあります。太陽が背中側にあるか、かくれている場所を選びましょう。
想像をひらく問いかけ
大事なのは、答がひとつではない質問をして、お子さまに考えてもらうことです。子どもと雲をながめるときは、「あの雲、なにに見える?」「このまま動いたら、次はどうなるかな」と聞いてみましょう。「あの雲はどこへ行くと思う?」「さわったらどんな感じかな」もおすすめです。お子さまが「ドラゴンみたい」と言ったら、そのままついていきます。そのドラゴンは何をしているの?やさしいの?どこに住んでるの?知識を引き出そうとしなくていいのです。きっかけを手わたしたら、大人はそっと一歩下がりましょう。
よく見る力を育てる問いかけ
想像の問いかけといっしょに、観察の質問もいくつか混ぜると、見るときの目がこまやかになります。「いちばん速く動いている雲はどれ?」「雲は高いところにある?低いところ?」。大きくなっているのか小さくなっているのか、厚くなっているのか薄くなっているのか、声に出してふしぎがってみましょう。今日の空は青が多い?白が多い?いちばん大きい雲は?いちばんちっちゃい雲は?こうしたゆるやかな比べっこで、こまかなところや変化をさがすことが身につきます。勉強っぽさはまったくないまま、自然観察のいちばん大事なところにふれているのです。
好奇心をのばす問いかけ
4歳、5歳くらいになると「どうして?」「どうやって?」が増えてきます。空は、完璧な答がなくてもそれを楽しめる場所です。雲は何でできているのと聞かれたら、「すごく小さな水と氷のつぶが、高いところに浮かんでいるから、ふわふわに見えるんだよ。つぶが重くなると雨になって落ちてくるの」と言えば足ります。雲はなぜ動くのと聞かれたら、風の出番です。ブランコを押す風が、空も押しているんだよ。わからないときは「わからないな、いっしょにふしぎがろう」でまったくかまいません。「知らないから、調べてみようか」という姿を見せることは、教えられることのなかでも最高のもののひとつです。
お子さまの行きたい方向へ
形にひとつずつ名前をつけたい子もいれば、だまって寝ころんでいたい子もいるし、1分でチョウを追いかけていく子もいます。どれも成功です。目的は質問をこなすことではなく、少しの注意を分かちあい、お子さまの好奇心に行き先を決めてもらうこと。問いかけが空ぶりしたら引っこめて、大人が自分の気づきを声に出してみましょう。クイズを出すより、大人がふしぎがる姿を見せたほうが、子どもは乗ってくることが多いものです。のんびりした長い沈黙も、楽しさのうちです。
毎日の暮らしにつなげる
習慣になると、空はいつでものぞける「ふたりの共通の話題」になります。園への道でちょっと見上げて「今日の雲は何してる?」と聞いてみる。雨の前に空が重たい灰色になったことに気づく。そうしたことで、天気の感覚や「こうなると、こうなる」という見方が自然に育ちます。1週間、毎日空の絵を描いてみると、空がどれほど日によってちがうかが目に見えます。きちんとやる必要はありません。長い1回より、数秒の見上げを何度も。それがいちばん効きます。
安全について、ふたつだけ
雲の観察は、これ以上ないほどリスクの低い遊びですが、気をつけたいことがふたつあります。うすい雲ごしであっても、子どもに太陽をまっすぐ見させないこと。目を傷めるおそれがあります。そして晴れた日は、日かげ、帽子、日焼け止めで幼い肌を守ること。外でじっと寝ころんでいる子も、日焼けはします。それさえ守れば、あとは深呼吸して、見上げて、話すだけ。多くの家族にとって、もっとあっていい時間です。
ここだけは: 雲が何に見えるか、どこへ行くのか、何でできているのか。答のない問いを投げかけたら、あとはお子さまの想像にまかせましょう。