はじめてのことばの前に。赤ちゃんとのやりとりを育てるには

はじめてのことばが出る前から、赤ちゃんのコミュニケーションはもう豊かです。ドアのほうを見る、だっこしてと両手を上げる、きゃっと声を上げる、指をさす、いつもの遊びの途中でひと息まつ。どれにも意味があります。大人がそのサインに気づいてこたえると、赤ちゃんは「伝えると、ちゃんと届くんだ」と学んでいきます。

小さなサインを、ひとつの番として受けとる

赤ちゃんが何を見ているか、サインの直前に何があったかを見てみましょう。コップに手をのばしたら、名前を言って、それに合ったこたえを。顔をそむけたら、少し距離をおきます。サインを読みとるのに、完璧に当てる必要はありません。はっきりしたことばを待つより、落ち着いて受けとってみて、ちがったら直す、そのほうがずっと多くを教えてくれます。

見通しのある、やりとり遊びを

  • 声をひとつまねして、赤ちゃんがこたえるのをまつ。
  • いないいないばあをして、「ばあ」の前に少しまつ。
  • 赤ちゃんが安全におすわりできるようになったら、やわらかいボールを転がしあう。
  • バイバイの流れの中で、いつも同じところで手をふる。

くり返すと、流れが予想しやすくなります。赤ちゃんが覚えたら、少し長くまつ、ちがう音を使う、というように、変えるのは一か所だけにしましょう。

ことばを足す、でも求めない

その場に合ったことばを、1つか2つ。「わんわん、走ってるね」「コップ、からっぽ」「バナナ、もっと?」。赤ちゃんが指さしたら、同じほうを見て、見つけたものの名前を言いましょう。「これなあに?」とくり返し聞くより、ひと言感想を言うほうが、やりとりはあたたかく続きます。

身ぶりは、もどかしさを減らしてくれる

指さし、バイバイ、上に手をのばす、首をふる、といった役に立つ身ぶりを、大人がやって見せましょう。「もっと」「ミルク」「おしまい」などに、かんたんなベビーサインを使う家族もいます。そのときも、ことばは声に出して言い続けます。話すことが育っているあいだ、身ぶりは、意味に届くもうひとつの道を赤ちゃんにくれます。

全体のパターンに目を向ける

声や人からの働きかけにほとんど反応しない、音に気づいていないように見える、年齢のわりに声や身ぶりがとても少ない、できていたことができなくなった、というときは、相談しましょう。聞こえの検査や発達の検査を考えたほうがいいか、たずねてみてください。

コミュニケーションが「わざと」になっていくまで

はじめのサインは、体全体での反応から始まります。生まれたばかりの赤ちゃんは、泣く、顔を向ける、じっと動かなくなる。そのうち、ある声、ある目線、ある動きをすると、いつも決まったこたえが返ってくることに気づいていきます。コップに手をのばすことがよりはっきりした「わざと」になっていくのは、だれかがそれに気づいてくれるからです。サインの意味が完全にはわからなくても、ことばの前のコミュニケーションにこたえることが大切なのは、このためです。

「ボールがほしいのかな?」と、もっともらしい推測を声に出してみましょう。ボールをさしだして、様子を見ます。顔をそむけたら、変えればいいのです。こうした小さな直しを重ねることで、コミュニケーションは、正解がひとつのテストではなく、2人でつくるものだと赤ちゃんは学びます。

目線、指さし、身ぶりについていく

  • 赤ちゃんが何かを見たら、名前を言う前に、大人もそちらを向いて見る。
  • 早口の練習ではなく、本当の体験の中で、近くの物を指さす。
  • バイバイ、手をのばす、見せる、首をふる、を意味のある場面でやって見せる。
  • 赤ちゃんが物を持ってきたり見せたりしたら、手放さなくても、こたえる。

指さしは、もっと大きな仕組みの中の、ひとつの身ぶりにすぎません。赤ちゃんが目線、表情、声、動きをどう組み合わせて、興味を分かちあったり、助けを求めたりしているかを見てみましょう。

つらくならない「伝えたくなるしかけ」を

伝えたくなるしかけとは、赤ちゃんにサインを出すチャンスをあげる、ちょっとしたひと間のことです。ほしいおもちゃを、ふたの開けやすい、中の見える入れ物に入れる。大好きなゆらゆら遊びを続ける前に、少しまつ。安全な物を2つ、赤ちゃんが選べるように持つ。赤ちゃんが楽しく参加し続けられるくらいの、やさしいしかけにしましょう。もどかしさがつのってきたら、すぐに手伝って、役に立つ身ぶりやことばをやって見せます。

ベビーサインは、もうひとつの道として

「もっと」「おしまい」「ミルク」「手伝って」の、家族のかんたんなサインは、赤ちゃんに実際に使える伝えかたをくれることがあります。同時にことばも声に出し、いつも同じようにこたえましょう。サインは、きちんとした教室で教えなくてもかまいません。本当の毎日の流れの中で、くり返しやって見せれば十分です。

伝える力だけでなく、わかる力にも目を

赤ちゃんは、名前を言われた人のほうを見る、「だめ」のあとに手を止める、いつもの流れを先回りして待つ、なじみの物を探す、といったことで、わかっていることを見せてくれることがあります。わかる力と伝える力は、いつも同じ速さで進むとは限りません。専門家には、声やことばの数だけでなく、赤ちゃんが何をわかっているように見えるかも伝えましょう。

やりとりを聞きとりにくくするものを減らす

顔を合わせてやりとりするときは、つけっぱなしのテレビ、音楽、スマホの音を小さくしましょう。赤ちゃんが大人の顔を見て、声を楽に聞けるくらいの近さに。音への反応がまちまちなときは、注意がそれているだけだと決めつけないこと。その様子を医師に伝え、聞こえを確かめたほうがいいか、たずねてみましょう。

コミュニケーションが気になるときに役立つ記録

赤ちゃんがどうやってお願いし、いやと伝え、興味を分かちあい、人にこたえているかをメモしましょう。なじみの場所と、なじみのない場所の両方の例を入れます。安全にとれるなら、ふだんのやりとりの短い動画も役に立ちます。前は使っていた身ぶり、声、人へのこたえがなくなったときは、早めに相談してください。

ポイント: めざすのは、合図ひとつでことばを言わせることではありません。順番をとって、わかってもらえる安心な体験を、たくさんつくることです。

WHO and UNICEF, Nurturing Care Framework