新しいことを知って「考えが変わった」を、ほめてあげたい
新しいことを知ったときに考えを変えられるのは、考える人がもてる、とても価値のある習慣のひとつです。大人でも、意外なほどめずらしいものです。その種は、小さいころにまかれます。新しいことを知った子どもが考えを変えるのを受けいれ、考えをあらためることを、はずかしい引きさがりではなくいいこととしてあつかうと、お子さまに一生ものの強みを渡せます。まちがうことにおびえずに学べる力です。
正解より大切な理由
大人はつい、子どもが知っていることをほめます。それは静かに、正しいことこそ大事だと教えます。でも知識が増えていくのは、手がかりが変わったときに人が考えを変えるからこそです。考えを変えるのははずかしいと信じている子は、体面を守るためにまちがった考えにしがみつきます。考えをあらためるのは、かしこくてふつうのことだと思っている子は、心がひらいたまま学びつづけ、世界にびっくりさせられても、動じません。このしなやかさが、毎日の考える力の中心にあります。
まずは、親がお手本に
子どもは、言われたことより見たことをずっとよくまねします。いちばん力があるのは、親自身が声に出して考えを変えることです。
- 「今日は雨が降ると思ってたけど、空が晴れてきたから、考えを変えたよ」
- 「鍵はかばんに入れたと思いこんでた。まちがいだった、ほら、棚の上にあったよ」
- 「前はクモって気持ち悪いと思ってたけど、じつはすごく役に立つって知ったんだ」
親がはずかしがらずに、すんなり考えをあらためるのを聞くと、もっと知ったときに考えを変えるのは、ちゃんとした人がふつうにすることなのだと伝わります。
負けではなく、レベルアップとして
ここでは、ことばが大きな役目をはたします。考えが変わったことをどう言うかで、子どもの受けとめかたが変わります。
- 「新しいことを知ったから、今はちがうふうに考えられるね」
- 「それが、かしこい考えかただよ。もっと知ったら、考えを変えるんだ」
- 「前はそう思ってたけど、今はもっと知ってるね。すばらしい」
考えを変えることを、見つかってしまったことではなく、かしこくなったこととしてお祝いすると、子どもは守りに入るのではなく、考えをあらためようと思えます。
方向転換を無理じいしない
扉をひらくことと、子どもをそこへ押しこむことは、ちがいます。新しいことを知っても前の考えにしがみついているとき、まちがいを認めさせようとすると、たいてい逆効果で、ますます意地をはらせてしまいます。かわりに、新しい情報をそっと置いて、働くのにまかせましょう。
- 同意を求めずに、手がかりを見せる。「やっぱりうくみたいだね。おもしろいね」
- 時間をあげる。子どもは、あとで自分のことばで考えを変えることがよくあります。
- 「ほらね、言ったでしょ」はさける。学ぶことが負けることに変わってしまいます。
めざすのは、認めさせられたからではなく、なるほどと思ったから考えをあらためる子です。
考えが変わったら、あたたかく歓迎する
お子さまが考えを変えたとき、親の反応が、またそうしていいのかどうかを教えます。心からのあたたかさで迎えましょう。
- 「よく考えて、新しく決めたんだね。すてきだと思う」
- 「もっと知ったから考えを変えたんだね。すごく大人っぽい考えかただよ」
前の考えを信じていたことを、決してからかわないでください。前の考えをからかわれた子は、考えが変わったことを隠すようになります。それこそ、防ぎたい習慣です。
親自身の「決めつけ」に気づく
子どもの前でまちがえたとき、自分がどうふるまっているかに気づいておく価値があります。まちがいを言いわけしたり、ちがうと示されて言いかえしたり、認めるのをいやがったりすると、子どもはまちがうのは危険だと吸収します。「あ、まちがえてた。知れてよかった」と肩をすくめて笑顔で言えれば、子どもにも同じようにしていいという許しを渡せます。親が自分のまちがいとどうつきあうかが、いちばん強い教えです。
年齢に合わせて
小さな子は、思っていることと本当のことを、その段階ではまったくふつうのしかたでごちゃまぜにし、正反対のふたつの考えを、楽しそうに同時にもっていることもあります。そのごちゃまぜを全部直したり、ひとつひとつを考えをあらためる授業にしたりする必要はありません。やさしいお手本は本当に意味のある場面にとっておいて、小さなつじつまの合わなさの多くは、そのまま流しましょう。まわりの子とくらべて、理解やことば、学びにもっと広い心配がある場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんが安心や支援をくれます。ほとんどの子にとって、しなやかな考えかたは、やさしくお手本を見せてくれる親のもとで自然に育ちます。
考えを変えられるのは、強さ
事実が変わったときに考えを変えるのは強さで、それは小さいうちに身につきます。親が声に出してお手本を見せ、考えをあらためることをまちがいではなくかしこくなることとしてあつかい、無理じいせずに新しい情報を見せ、考えが変わるたびにあたたかく歓迎する。そうすれば、新しい手がかりに、守りではなく好奇心で向きあえる子が育ちます。一生学びつづけるための、いちばん確かな土台のひとつです。
ポイント: 考えを変えることを、見つかってしまったことではなく、かしこくなったこととして受けとめましょう。親がお手本を見せ、新しい情報はやさしく見せ、方向転換のたびにあたたかく歓迎すれば、学びへの心がひらいたままです。