ふたつのものをくらべる力で、子どもの考える力を育てる
子どもは、議論したり筋道立てて考えたりできるずっと前から、くらべることができます。どっちのりんごが大きい?どっちの上着があたたかい?どのおはなしがいちばん好き?くらべることは、いちばん早くから見られる考える力のひとつで、静かに大きな力をもっています。ふたつのものをくらべる手伝いをするとき、親は一度にふたつ以上のことを頭におき、違いに気づき、理由を言うことを教えています。それが判断する力の始まりです。
くらべることが、こんなに大切な理由
くらべるには、ふたつのことを頭にとどめて、並べて見なければなりません。これは本物の頭の仕事で、選ぶ、決める、手がかりをくらべる、自分の意見をもつ、とあとに続くほとんどすべての土台になります。「こっちのほうがいいよ、だって」と言える子は、ふたつのりんごから選ぶというふつうの用事のなかで、よく考える力の下地をつくっているのです。
くらべることは、子どもをゆっくりにもしてくれます。最初に目についたものをつかむのではなく、ひと呼吸おいて考える。早いうちから育てたい習慣です。
見えて、さわれるものから
最初は具体的なくらべっこから。小さな子は抽象的な考えより物をずっとくらべやすいので、そこから始めましょう。
- 「この石とこの石、どっちが重いかな?持ってみよう」
- 「この上着とあのトレーナー、今日はどっちがあたたかいかな?」
- 「このふたつの葉っぱを見て。どこが同じ?どこがちがう?」
体を使ったくらべっこなら、子どもは五感を使って手がかりを集められ、考えが目に見えて、わかりやすくなります。抽象的なくらべっこは、この具体的な出発点から育っていきます。
理由を、やさしくたずねる
大切な一歩は、選ぶことではなく「だって」の部分です。考えが住んでいるのは、理由のなかです。
- 「赤いのを選んだね。どこがよかったの?」
- 「大きい箱のほうがたくさん入ると思うんだね。どうしてそう思う?」
- 「あのおわりかたがいちばん好きなんだね。何がよかった?」
正しい答えを確かめているのではありません。なぜかに気づいてことばにするよう誘い、思いつきの選択を、ひとつの考えに変えているのです。どんな理由でも、小さな理由でも、受けとめましょう。
考えへと、やさしく進む
物をくらべるのがらくになってきたら、経験を、そして考えをくらべられます。
- 「公園とプール、どっちが楽しかった?何がちがったの?」
- 「おもちゃは、いっしょに使うのと順番こ、どっちがいいと思う?どうして?」
- 「このふたつのつくりかた、どっちがじょうぶだと思う?」
こうしたくらべっこは、手で持てないものをくらべることを求めるので、もっと背のびが必要です。軽く進めて、理由はシンプルでかまいません。大切なのは答えのかしこさではなく、くらべる練習そのものです。
ちがう答えを、歓迎する
くらべっこにはたいてい正しい選択がなく、それは欠点ではなく長所です。親がつまらないと思ったおはなしをお子さまが好きなら、すてきなことです。理由のついたその子の意見こそが、育てたいものです。親の好みに引っぱりたくなる気持ちはおさえましょう。自分のくらべかたが親とちがっていても大切にされると学んだ子は、親が聞きたい答えを当てようとするのではなく、自分で考える自信を身につけます。
親自身のくらべかたを声に出す
子どもは、聞くことでくらべかたを学びます。自分の小さな決めごとを、くらべっことして声に出してみましょう。
- 「バスにするか歩くか、まよってるの。バスのほうが速いけど、今日は歩くのが気持ちよさそう。だから歩こう」
- 「このトマトは安いけど、あっちのほうが熟してるみたい。熟してるほうにしようかな」
親がふたつの選択肢をくらべ、何を取って何をあきらめるかをことばにして選ぶのを聞くと、よく考える人はこうやって決めるのだとわかり、まねできるお手本になります。
クイズではなく、おしゃべりのままに
これがいつも質問ぜめになり、楽しさが消えてしまうおそれもあります。ときどき、本当の好奇心からするくらべっこのほうが、途切れない「どっちがいい?どうして?」より、ずっと役に立ちます。今日はくらべたくなさそうなら、そのままにしましょう。くらべることが、考えを調べられることではなく、いっしょにするおもしろいことに感じられるとき、習慣はいちばんよく育ちます。
発達について、ひと言
くらべる力は年齢とともに着実に育ちます。2歳くらいの子はシンプルでわかりやすいものをくらべ、年少から年長になるにつれて、もっとたくさんのことをくらべ、もっとしっかりした理由を言えるようになります。どちらも順調です。まわりの子よりかんたんな考えを理解するのがずっとむずかしそう、ことばや学びに心配がある、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんが安心や支援をくれます。でもほとんどの子にとって、くらべる力は、ふたつのものをくらべて理由を言う毎日のチャンスだけで、のびのび育っていきます。
「だって」が判断の力を育てる
ふたつのものをくらべる手伝いをするとき、親はふたつのことを頭におき、違いに気づき、理由を言うことを教えています。一生使う考える力です。さわれるものから始め、いつも「だって」をたずね、親とちがう答えを歓迎し、自分のくらべかたを声に出す。軽やかに、好奇心をもって続ければ、毎日の選択が、育つ頭のための、やさしい毎日のトレーニングになります。
ポイント: くらべることは、ふたつのことを頭におき、理由を言うことを教えます。具体的なものから始め、いつも「だって」をたずね、親とちがう答えを歓迎しましょう。