「ママやって」が止まらない子。何でも親にやってほしがるときは
「ママやって」「抱っこ」「食べさせて」。できるはずのわが子が、まるでまったく何もできない子になることに決めたかのように、小さな用事のたびに代わってほしいとせがむ日があります。何でも親にやってほしがるとき、どうこたえるかは本当にむずかしいものです。答えが、ただ断ることであるのはまれだからです。その要求の下には、たいてい何かの必要があります。そしてその必要を満たすことが、やがて自分でやる気持ちを戻してくれます。
お願いの理由をさがす
急に何でもやってほしがるようになった子は、何かを伝えようとしています。疲れやおなかのすきで、かんたんなことさえ重すぎると感じていることもあります。近くにいたい、お世話されたい、親はちゃんといると安心したい、という合図のこともあります。下のきょうだいの誕生、引っ越し、入園などの変化のあとに、安心するために少し赤ちゃん返りすることもあります。そして、ただ親にやってもらうほうが、心地よくて楽だから、ということもあります。考えられる理由に名前をつけると、ことばだけでなく、本当の必要にこたえやすくなります。
親をあやつろうとしている、と受けとらない
昨日は自分で服を着た子が、今日はできないと言いはると、あきれたり、ふりまわされている気がしたりするのは無理もありません。でも、小さな子はたくらんでいるのではなく、本物の気持ちを、自分にできる唯一の方法で表しているのです。いらいらでこたえると、たいていこじれていき、落ち着いた「どうしたのかな」でこたえると、おさまっていきます。お願いはたくらみではなく必要から来ているのだと思いだすと、ここでのすべてをうまくいかせる、あたたかさを保ちやすくなります。親がどっしりしていることが、解決の半分です。
必要を満たしてから、用事を返す
いちばんの近道は、子どもが本当に求めているもの、つまりつながりを少しあげてから、そっと用事を返すことであることがよくあります。抱っこと「ここにいるよ、いっしょにやろう」は、ひとりでやりなさいとどれだけ言うより早く、何もできない気持ちをとかしてくれることがあります。心が満たされたと感じると、子どもはたいてい、ずっとすすんでやってみようとします。これが、何でも親にやってほしがる子へのこたえ方の芯です。まずつながって、それからやることをはげます。
代わりにやるのではなく、ふたりでやる
ぜんぶやることと、手伝うのを断ることのあいだに、役に立つまんなかの道があります。親が一部をやり、子どもが一部をやるのです。「くつした、ママが広げてるから、つま先を入れてね」「腕を通しはじめてくれたら、むずかしいチャックはママがやるね」。子どもを運転席に座らせたまま、求めている支えもあげられます。その後の数日で、親の分をそっと小さくしていけば、やがてまた子どもがぜんぶやるようになっています。たいていは、その変化に気づかないうちに。
期待は、あたたかく、はっきりと
気持ちに寄りそうことは、期待を手ばなすことではありません。やさしくしながら、これは自分でできることだという線を守れます。やさしく、自信をもって「靴、自分ではけるの知ってるよ。ママ、応援してるね」と言えば、親はあなたを信じていると伝わります。何もできないと感じている子に必要なのは、まさにそのメッセージです。いらいらせずに言って、待ち、子どもがそれにこたえるのにまかせましょう。親の落ち着いた自信は、代わりにやることや意地の張りあいより、ずっと心を動かすことがよくあります。
時間に余裕をもたせる
「やって」の多くは、みんなが急いでいるときに起きます。急かされた子はあわてて、親に代わってもらうという近道に手をのばします。できるときは、自分でやることが大切な時間帯、とくに朝に、数分の余裕を組みこんでおきましょう。時間があれば、最初のしぶりを待って、子どものペースでやらせることができます。時間がなければ、いちばん早いのはいつも親が手を出すことで、くせはいっそう深くなります。
がんばりに気づいて、あたためる
子どもがいやいやでも用事を自分に取りもどしたら、それに気づきましょう。シンプルで心からの「自分でできたね、見て見て」は、何かを自分でできたときの、いい気持ちを思いださせます。子どもは、抱っこされてお世話されるのがさしだされているときはとくに、自分でやることがどれだけ満足できるかを忘れがちです。自分にできる力へそっと目を向けさせると、自分でやりたい気持ちのほうへ天びんがかたむいていきます。結局のところ、自分はできると感じることは、お世話されることより、うれしいものだからです。
もう少しよく見たいとき
赤ちゃん扱いされたい気持ちは、ふつうの発達の中で、とくに大きな変化のころに来たり去ったりするもので、たいてい根気よく待てば過ぎていきます。でも、確かにできていた力がはっきりと長く後戻りしている、とくに気分、眠り、食欲、行動の変化といっしょにある、という場合は、気にかけておく価値があります。後戻りが何週間も続く、ひどく見える、心配だ、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけ医に話してみましょう。ふつうの時期なのか、支えがあったほうがいいことなのかを、いっしょに考えてくれます。
自分でやる力は戻ってくると信じる
何でもやってほしがる子は、できる力を失っているのではなく、たいてい、しばらく別の何かを必要としているのです。奥にある必要を満たしてから、そっと、あたたかく用事を返すことでこたえると、できる力はひとりでにまた顔を出します。小さな子の自立は、まっすぐな線であることはまれです。根気とつながりがあれば、「やって」の時期は過ぎていき、子どもはまた、自分でやることの静かな誇りへと戻っていきます。
ポイント: 「やって」は、たいてい休み、安心、近さが必要だというサインです。まずつながってから、断るのでも代わりにやるのでもなく、ふたりでやることと落ち着いた自信で、用事を返していきましょう。