「あの子のほうが上手」と比べてしまう子に、自信を育てるには
「あの子はできるのに、わたしはできない」「あの子の絵のほうが上手」「ぼく、いちばん遅い」。3歳から6歳くらいのどこかで、子どもはまわりのみんなと並んだときの自分の位置に気づきはじめます。そして、それが本当につらさのもとになる子もいます。人と比べてしまう子に自信を育てるには、まず、比べることはふつうのことだと受け入れ、それから、ほかのみんなではなく、自分自身の伸びで自分を測れるように、そっと手を貸すところから始まります。
子どもが比べはじめるわけ
比べることは、気づく力が育っているしるしで、欠点ではありません。育つにつれて、子どもはできること、速さ、見た目の違いに気づき、人から自分がどう見えるかを想像できるようになります。これは健やかな、人を理解する力の一部です。困るのは、比べることが「気づく」から「判定する」に変わり、誰かより遅れていることを、自分はだめなのだと決めつけてしまうときです。親の仕事は、気づくことを止めることではなく、そのあとによく続く、きびしい結論をやわらげることです。
親自身が比べないようにする
子どもは、まわりのことばから比べるくせを吸いこみます。「お兄ちゃんみたいに片づけられないの?」「見て、あの子は上手に貸してあげてるよ」。愛情からの比較でさえ、自分を人と並べて順位をつけることを教えてしまいます。ほめるつもりの比較も同じです。今日は誰かより上にいられるなら、明日はその子より下になることもある、と子どもはすぐに気づくからです。人と比べてしまう子に自信を育てる最初の一歩は、多くの場合、親自身のふだんのことばから比べることを取りのぞくことです。
鏡を、その子自身の伸びに向ける
人と比べることへのいちばん健やかな解毒剤は、前の自分と比べることです。どれだけ進んできたかに、子どもが気づけるように手を貸しましょう。「うんてい、ぜんぜんできなかったころのこと、覚えてる?今の自分を見てごらん」。これは、ほかの誰にも勝ったり負けたりできない、本物の、やる気の出るものさしになります。自分の伸びを追えるようになると、ほかの誰かのできたことが、自分の失敗のように感じられなくなり、ただその人の別の道のりとして見えるようになります。
その下にある気持ちに名前を
「ぼく、かけっこがいちばんへた」と言うとき、子どもはたいてい、事実を報告しているのではなく、気持ちを表しています。まず気持ちに会いに行きましょう。「今日は置いていかれたような気がして、いやだったんだね」。わかってもらえることのほうが、「そんなことない、上手だよ」と急いではげますより、ずっとよくその場の熱をさましてくれます。気持ちが受けとめられてはじめて、子どもは親が次にさしだす、もっとバランスのとれた見方に言いかえさずに耳をかたむけられます。
「上手」の意味を広げる
比べてしまう子は、たいてい、せまい得点板にくぎづけになっています。いちばん目につくもの、誰がいちばん速いか、誰がいちばん字が読めるか、誰の靴がいちばんかわいいか。親はその絵を、そっと広げてあげられます。やさしさ、好奇心、がんばり、ユーモア、ねばり強さもふくめて、得意にはいろいろな形があることを伝えましょう。人はそれぞれまったく違うところに強みがあり、何でもいちばんの人はいないのだとわかると、ひとつの得点板は力を失い、自分の価値が立っていられる場所が広がります。
「あの子のほうが上手」の瞬間は、落ち着いて
友だちのほうが何かが上手だと子どもが言ったら、どちらのはしにも寄らないようにしましょう。しょんぼり同意するのでも、中身のないおせじで打ち消すのでもなく。あたたかく、正直に。「そうだね、そうたくんは2年間スイミングに通ってるから、たくさん練習してきたんだよね。あなたも、自分のペースで練習中だよ」。これは、上手さは決まった生まれつきの順位ではなく、時間とがんばりから生まれるという、とても大切な考えを教えてくれます。その理解は、心をむしばむ比較から子どもを守る、いちばん強い盾のひとつです。
親が調整できる、比べるきっかけを減らす
比べる気持ちをあおる環境もあります。いつも競争、順位表、そしてもう少し大きな子なら、ほかの人のいいところばかりが流れる画面。すべての比較から子どもを守ることはできませんし、そうするべきでもありません。でも、どれくらいふれさせるか、それについてどう話すかは、考えて選べます。家では競争より協力を大切にし、遊ぶこと自体が楽しいゲームをすると、子どもは測ることからひと休みして、ただ楽しめます。
比べることが、もっと深いことのサインのとき
比べる気持ちのほとんどは、子どもが育って自信がつくにつれてやわらいでいきます。でもときどき、それが続いて痛みをともなうことがあります。いつも自分をけなす、自分のことが本当にいやそう、うまくできないのがこわくて活動から身をひく、気分や眠りや食欲が変わる。こうした自分の価値の低さが何週間も続いたり、心配になったりするときは、地域の保健師さん、かかりつけ医、園や学校の先生に話してみましょう。もっと支えがあったほうがいいかどうかを、いっしょに考えてくれます。
長く続く自信
人より上であることの上に建てた自信はもろいものです。いつだって、もっと上の誰かがやってくるからです。自分の価値を知り、自分の伸びを追い、いろいろな強みを大切にすることの上に建てた自信は、じょうぶで長続きします。人と比べてしまう子の気持ちを、その子自身の道のりへと向けなおすたびに、親は、いつだって比べる相手がいる世界の中へ、子どもがもっとゆるがない、やさしい自分の感覚を持っていけるように手を貸しているのです。
ポイント: 比べるのはふつうのことですが、自信が長続きするのは、その子自身の伸びに根ざしているときです。親のことばから比較をなくし、気持ちに名前をつけ、「上手」の意味を広げましょう。