旅先でも、いつものリズムを少しだけ守るには

いつもの決まった流れは、小さな子の一日を支える見えない足場です。次に何が来るかを教え、安心させ、眠りと食事をそっとまとめてくれます。旅はその足場をぐらつかせます。食事は変な時間になり、お昼寝はとび、寝る時間はずれこみ、落ちついていた子が1、2日で落ちつかなくなることもあります。うれしいことに、家をそのまま再現する必要はありません。旅行中に小さな子のリズムを守るとは、じつは、いくつかの大事な支点を守って、ほかは自由にしておくことなのです。

時計より、支点

旅先で家の時間割をそのまま回そうとすると、いらいらのもとになります。旅の意味は、毎日がいつもとちがって見えることにあるからです。お子さまが本当にたよっているのは正確な時刻ではなく、順番と合図です。お昼寝の前にはやっぱりミルク、絵本の前にはやっぱり歯みがき、お風呂はやっぱりもうすぐ寝る時間のしるし。この順番を守れば、まわりがかなり入れかわっても小さな子は乗りきれます。安心させるのは時計の何分ではなく、パターンが予想できることなのです。

ゆずれないことを、2つか3つ

すべては守れないので、わが子にとって一日のどこがいちばん大事かを、前もって決めておきましょう。多くの子にとって、寝る前の流れは聖域です。乱れるといちばん早く眠りがくずれるからです。お昼のお昼寝や、ちゃんとすわって食べるお昼ごはんが大事な子もいます。支点を2つか3つ選んでしっかり守り、ほかは旅に合わせて気持ちよく曲げましょう。寝る前の流れが守られた子は、ばたばたで興奮しすぎた午後も、一日まるごと足場をなくした子よりずっとうまく乗りきれます。

合図を持っていく

決まった流れは、することと同じくらい、感覚の合図で始まります。お子さまの頭を、そのモードに切りかえる小道具を荷物に入れましょう。寝る前の絵本、お気に入りのぬいぐるみ、いつものコップ、子守唄やホワイトノイズ。こうした持ち運べる合図が、旅行中のリズムを保つ大仕事の多くを引きうけてくれます。まったく新しい場所でも、お子さまに「お昼寝の時間だよ」「寝る時間だよ」と伝えてくれるからです。いつものスリーパーや毛布は、眠りにとくに強い力を発揮します。

いちばんに眠りを守る

ひとつだけ守るなら、眠りにしましょう。よく休めている子はほかのことを全部乗りきり、疲れすぎた子はくずれてしまうからです。ベビーカーでも、車でも、ほかの家族が出かけているあいだの宿での静かな30分でもかまわないので、いつもの時間にだいたい合わせてお昼寝をとりましょう。夜ぐっすり寝てくれるのを期待して昼間の眠りを全部とばしたくなっても、こらえてください。たいていは、疲れすぎて高ぶった子が寝る時間に抵抗し、夜中にもっと起きる、という裏目に出ます。知らない部屋でも、寝る前の順番はいつもどおりに。

食事とおやつを安定させる

空腹は小さな子をあっというまにくずします。旅先の食事は予想がつかず、おそい時間のレストランの夕食、なれない食べ物、休けいのあいだの長い空白がつきものです。お店の席を待つあいだにおなかが空っぽにならないよう食べなれたおやつを持ち、毎回の食事に、見おぼえのあるものをひとつはのせるようにしましょう。旅先の食事をひと口ずつ見はる必要はありませんが、夜9時におなかがすいて力つきた小さな子は、だれにとってもつらいものです。

冒険だけでなく、休む時間も

旅の予定はお出かけでうめたくなるものですが、小さな子には休けいが必要です。わくわくすることが立てつづけに続くと刺激が多すぎて、楽しさがむずかりに変わります。毎日に、ゆっくりした時間を組みこみましょう。急がない朝ごはん、宿にもどっての静かな遊び、ちゃんと守られたお昼寝。予定表ではなくお子さまにペースを合わせると、みんながごきげんでいられ、出かけたお出かけも、たいてい本当に楽しいものになります。

旅に、わざとリズムを変えてもらう

乱れが全部悪いわけではありません。旅は、お子さまが新しいことにふれるすてきなチャンスで、時間割に少しゆるくなるのも旅のうちです。目指すのはかたい時間割ではなく、しなやかなリズムです。一日の決まった点にはなじみの支点を置き、そのあいだはたっぷり自由に。ときにはおそい時間のアイスクリームも、もう1冊の絵本も「いいよ」と言いましょう。家に帰れば、リズムはかんたんに戻せます。

帰ってから、もとにもどす

どれだけ支点を守っても、旅のあとはたいてい少しゆるんでいて、それでかまいません。家に帰ったら、2、3日かけて、そっといつもの流れへもどしていきましょう。いつものお昼寝と寝る時間を復活させ、外で日の光を浴び、お子さまが調整しなおすあいだの落ちつかない夜も、根気よくつきあいます。旅先でも基本の順番を続けていたので、ゼロから始めるより、ずっとなめらかにもどれます。

心と体の健康について、ひと言

いつもの流れが乱れると、どんな子でも数日は機嫌が悪くなったり、べったりになったりします。それはふつうのことです。ただ、時間がずれただけでなく本当に具合が悪そう、熱がある、飲みや食べがよくない、いつもとちがってぐったりしている、つらそうな様子が続く、というときは、リズムの問題ではなく健康の問題としてあつかい、心配なら医療機関に相談してください。

覚えておきたいこと: 家をそのまま写そうとしなくて大丈夫。支点を2つか3つ、たいていは眠りと食事に決めて、なじみの順番と合図を守り、ほかは自由にしておきましょう。

UNICEF, Parenting: your guide to the early years and beyond

WHO, Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age