その子の一日から、寝る前のおはなしをつくる
寝る前には、ぴったりの絵本を選ぶ元気が残っていない日もあるし、暗いなかでただそばにいてほしい夜もあります。そんな夜、いちばんの材料はもう部屋の中にあります。今日起きたこと全部です。子どもの一日から寝る前のおはなしをつくれるようになると、道具もいらず、明かりを消したあとでもできる、落ちついてつながれる習慣が手に入ります。
一日がいいおはなしになる理由
子どもは自分のことを聞くのが大好きで、自分の一日からとったおはなしはすぐにわかります。自分で過ごした一日なのでついていきやすく、大人が忘れたところを足すこともできます。一日を語りなおすことは、子どもがそれを理解する助けにもなり、ごちゃまぜのできごとを、はじまりとなかとおわりのあるおはなしに整えてくれます。
気持ちの面のよさもあります。一日をやさしく語ると、楽しかったところをもう一度味わい、むずかしかったところにことばをあてるチャンスになります。しかも大人のひざの上や自分のふとんという安心な場所から。その静かな整理が、子どもが眠りにつく助けになるのです。
やわらかい、いつもの書きだしで
決まった書きだしのことばが、習慣の始まりを知らせます。「むかしむかし、○○ちゃんという女の子がいました」と子どもの名前を入れたり、「○○くんという男の子が、朝おきた日のおはなしをしようね」と始めたり。やさしい絵本のような形にすると、ふつうのできごとが特別なものに変わり、予想できることが安心をくれます。
そこから、一日を順番にたどります。起きて、朝ごはん、したこと、会った人、そしてどうおわったか。細かいところを全部入れる必要はありません。子どもにとって大切だった瞬間を選んで、あとは手放しましょう。
少しきらめきを足す
魔法は、実際の一日をおはなしに持ちあげる、小さなひと工夫にあります。
- 子どもにおはなしの名前や小さなひみつの力をあげて、主人公に。
- アイスクリームや水たまりジャンプのような、楽しいところでゆっくりする。
- ぐらついたことを勝利に変えて、どう乗りこえたかを見せる。「タワーがくずれても、大きく息をすって、もう一度つくりました」
- あたたかく、安全で、ねむたい主人公で、やわらかく終える。
こうした飾りで、子どもが実際にしたことからはなれずに、おはなしを楽しいものにできます。
むずかしい気持ちをおはなしでなだめる
寝る前は、その日のつらかった瞬間を子どもが落ちつかせる手助けをするのにいい時間です。けんかがあった、こわい犬がいた、園で泣きながらバイバイした。そんなことをやさしく語りなおし、気持ちに名前をつけ、だいじょうぶにおわるところを見せましょう。「タワーがこわれて、ぷんぷんしたね。それでいいんだよ。それからパパが手伝ってくれて、気持ちがらくになったね」。むずかしい瞬間がおだやかな声で解決するのを聞くと、眠る前にその重さがゆるむことがあります。
おわりは安心できるものに。寝る前のおはなしは、はらはらやこわいどんでん返しの時間ではありません。めざすのは、眠りへのゆっくりした安全な着地です。
子どもにも手伝ってもらう
ねむたい子でも、かじをとるのは好きです。止まって「それから何したっけ?」「そのとき、どんな気持ちだった?」と聞きましょう。子どもが足すことでおはなしがより本当になり、大人のひとり語りではなく、いっしょの語りなおしになります。やがて子どもがところどころ語りかえしてくれるようになるかもしれず、それはことばと記憶にすばらしいことです。
ペースはゆっくり、声は静かに。これは落ちつくための時間なので、短くわくわくする文より、長くやさしい文のほうが合っています。
たいへんな夜は短く
みんながくたくたの夜もあり、それでかまいません。ひとことでも立派なおはなしです。「きょうは病院でがんばったね。いまは安心してふとんの中だよ」。毎晩大長編を語る必要はありません。長さより習慣が大切で、小さなおはなしでもつながれて、子どもは落ちつきます。
よくあるつまずき
楽しませなければ、と思うのがいちばんのプレッシャーですが、その必要はありません。寝る前の子どもがほしいのは、どきどきのすじではなく、大人のおだやかな声と、自分の一日がおはなしになる安心です。ふつうこそが、ちょうどいいのです。
子どもを興奮させてしまうのも、もうひとつの心配です。おはなしがわくわくしすぎたり、こわい方向へ流れたりすると、子どもはかえって目がさえてしまうかもしれません。そうなったら、やわらかく、安全で、ねむたいほうへ、いつでも引きもどしましょう。
相談したほうがいいとき
つくった寝る前のおはなしは、やさしいおまけで、何かをはかるものではありません。寝かしつけそのものが毎晩のたたかいになっている、子どもがとても落ちつかない、不安が強い、眠りのことで心配がある、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に、眠りと心の健康について広く相談してみましょう。ことばや聞こえに一般的な心配があるときも同じです。こうした相談は支えのためのもので、おはなしの語り方の上手下手とは関係ありません。
覚えておきたいこと
子どもの一日から寝る前のおはなしをつくるには、やわらかい書きだしで始め、起きたことをやさしくたどり、少しきらめきを足して、安全でねむたいおわりに着地しましょう。子どもにも加わってもらい、疲れているときは短く、目的はつながりと落ちつきだと覚えておいて。今夜のおはなしは、もう書かれています。あとは語るだけです。
ポイント: 今日を、その子が主人公のやさしいおはなしとして語りなおし、おわりはやわらかく安全に。落ちつかせてくれるのは、すじではなく習慣です。