「保育園行きたくない」と言われたときの声かけ
「保育園、行きたくない」。朝いちばんにこう言われると、親の心はずしりと重くなります。かける声に、魔法のひと言があるわけではありません。大切なのは、ことばの下にある調子です。落ち着いていて、あたたかくて、この子はきっと大丈夫、と静かに信じていること。子どもは、大人が見せるものを信じます。何を言うかと同じくらい、どう言うかが大切なのです。
まず、気持ちをことばにする
安心させる前に、受けとめましょう。わかってもらえたと感じた子は、「心配しないで」と言われた子より早く落ち着きます。シンプルに、正直に、気持ちを映しかえすだけで十分です。
- 「今日は、バイバイするのがさみしいんだね」
- 「朝、おうちを出るのって、大変だよね」
- 「ずっといっしょにいたいんだよね。その気持ち、わかるよ」
気持ちをことばにしても、気持ちが大きくなるわけではありません。大きな気持ちを感じてもいいし、ちゃんと乗りこえられること、そして親は聞き流さずに聞いていることが、子どもに伝わります。
あたたかく、でも予定は変えない
気持ちを受けとめたら、線はやさしく守りましょう。「じゃあ、今日だけお休みにしようか」とゆらぐと、たくさん抵抗すれば結果が変わるかもしれない、と子どもは覚え、次の朝がもっと大変になりがちです。やさしさとしっかりさは、同時にもてます。
- 「今日は保育園の日。お母さんはお仕事に行くよ。お昼寝のあとに迎えに行くね」
- 「保育園に行く日だね。歩いていく?それとも自転車にする?」
どの靴にするか、どの道を通るかといった、小さな本物の選択肢をわたすと、行くかどうかを蒸しかえさずに、自分で決められる感覚を子どもにあげられます。
このあと何が起きるかを伝える
先が見えないと、心配はふくらみます。小さな子は、一日にはっきりした見通しのある形があり、思いうかべられる確かな終わりがあると、うまく乗りこえられます。
- 「まず朝ごはんを食べて、それから保育園に行くよ。遊んで、おやつを食べて、お昼寝して、それからお迎えに行くね」
- 「絵本の時間とお片づけの歌が始まったら、もうすぐお母さんが来るよ、っていうことだよ」
お迎えを、まだ読めない時計の時刻ではなく、園での一日の具体的な出来事に結びつけると、親はかならず戻ってくるという確かさを、子どもが心に持っていやすくなります。
約束しすぎずに安心させることば
守れないかもしれない明るい約束より、正直な安心をめざしましょう。
- 「かならず迎えに行くよ。毎日、毎日、かならず迎えに行くからね」
- 「先生がちゃんと見ていてくれるし、困ったら助けてくれるよ」
- 「さみしくなったら、うさちゃんをぎゅっとしていいからね」
「すっごく楽しいよ」「ママのことなんて忘れちゃうよ」といった約束は避けましょう。一日がつらかったとき、子どもは気持ちを聞いてもらえなかった、わけがわからない、と感じてしまうことがあります。
避けたいひと言
よかれと思ったひと言が、裏目に出ることもあります。
- 「お兄さん、お姉さんは泣かないよ」。ふつうの気持ちを、はずかしいものにしてしまいます。
- 「こわいことなんて何もないよ」。子どもにとっては本物の気持ちを、なかったことにしてしまいます。
- 「いい子にしていたら、おやつを買ってあげる」。がんばることが取り引きになり、かえってハードルが上がることがあります。
- 「お願いだから、ママを困らせないで」。親の気持ちをなだめる役を、子どもに背負わせてしまいます。
完璧である必要はありません。決められた台本より、あたたかく、落ち着いた、正直なことばのほうが、いつだって勝ります。
気持ちの話は、ちょうどいいときに
園の玄関での長い話し合いは、たいていことをむずかしくするだけです。安心させる話は、家や道すがら、朝ごはんのときなど、子どもがことばを受けとめられるくらい落ち着いているときにしましょう。実際の受けわたしは短く。ぎゅっとして、いつものさよならのことばを言い、自信をもって出ていく。あとは先生にまかせましょう。ほとんどの子は、親がいなくなれば数分で落ち着きます。
その下にあるものを探る
いやがるのは、ふつうの別れのさみしさのこともあれば、具体的で解決できる何かを指していることもあります。あわてずに、そっと思いめぐらしてみましょう。苦手な活動があるのか、疲れているのか、お友だちとのことか、トイレが心配なのか、新しい先生が来たのか。一日を通してどんな様子か、園にも聞いてみます。受けわたしのときに大好きな先生がいる、着いたらすることがある、といった小さな工夫で、すっといやがらなくなることもよくあります。
もう少しよく見たいとき
行きたくないと言うのは、たいていふつうのことです。とくにお休みのあと、病気のあと、大変だった週のあとには。ただ、悲しいというより本当にこわがっているように見える、つらさが激しく一日の大半続く、長く楽しく通っていたのに急にいやがるようになった、誰かにいたいことやこわいことをされたと話す、家での眠り、食欲、機嫌がはっきり変わった、という場合は、もっと真剣に受けとめ、園や地域の保健師さんに相談してください。親の直感を信じて、落ち着いてたずねましょう。
とはいえ、ほとんどの場合、いやがる気持ちは過ぎていきます。毎日変わらない、親の落ち着いた愛情あるふるまいこそが、効きめのある安心です。「行きたくない」への声かけで本当に大切なのは、親自身がどっしりしていること。子どもは自分の落ち着きを見つけるまで、親の落ち着きを借りていられるのです。
ポイント: 気持ちをことばにして、予定はあたたかく守り、このあとの流れを伝え、かならず迎えに行くと約束する。親の落ち着いた確かさは、どんな完璧な台本よりも子どもを安心させます。