やる前から「できない」と言う子に、最初の一歩をふませるには

鉛筆が紙にふれる前に、もう「できない」がやってくる。一日の中で、いちばんもどかしい小さなひと言のひとつかもしれません。始めさえすればたぶんできるのに、と見えているのですから。やる前から「できない」と言う子を手伝うには、まず、そのことばが力のことを言っているのはまれだと知るところから始まります。たいていは、こわさ、くせ、いっしょにいてほしい気持ちのどれかで、それぞれに、違う、もっとやさしい向き合い方がよく効きます。

「できない」が本当に意味していること

そのことばの下に耳をすますと、たいていいくつかのうちのどれかが聞こえてきます。「まちがえるのがこわい」のこともあります。「大きすぎて、どこから始めればいいかわからない」のこともあります。そしてよくあるのは、ただ「いっしょにやって。ひとりでこれと向き合いたくない」です。まったくできない、という意味であることは、ほとんどありません。「できない」を事実ではなく気持ちとして扱うと、こたえ方がやわらかくなります。そして、行きづまった子に必要なのは、まさにそのやわらかいこたえなのです。

代わりに仕上げたくなる気持ちをこらえる

やっぱり自分にはできないのだという子どもの思いこみを、いちばん早く確かなものにしてしまうのは、とびこんで代わりにやることです。助けだすたびに、「やっぱりね、これは無理だったんだ」とささやいてしまいます。だからといって、置きざりにするのではありません。ゆっくりして、近くにいて、親が引きとるのではなく、子どもがとりくんでいるものを持ったままでいられるように、となりから支えるのです。子どもの代わりにやることと、子どものそばでやることの違いは、時間とともにとても大きくなります。

とりくむことを、最初の小さな一歩まで小さくする

「できない」と言う子は、たいてい山まるごとを見ています。親の仕事は、最初の一歩だけを見せることです。「靴をはいて」ではなく「まずマジックテープをはがしてみよう」。「おうちをかいて」ではなく「かべの線を1本だけかいてみよう」。最初の一手がごく小さければ、「できない」は足場を失います。小さなことひとつなら、ほとんど誰にでもできるからです。その一歩をふめば、次の一歩は、親がもう何もうながさなくても、ついてくることがよくあります。

「できない」を「まだできない」に

「まだ」ということばには、静かな力があります。子どもができないと言ったら、足りないことばをそっとたしてあげましょう。「まだ、できないんだね」。これは苦戦を、かぎのかかったドアではなく、道のりのとちゅうとして見なおさせてくれます。歩く、自分で食べる、階段をのぼるなど、かつてはできなかったのに今はかんたんにできることを思いださせるのも、いっしょに。「できなかった、それからできた」という自分自身の歴史を見ることは、子どもがにぎっていられる、いちばん心強いもののひとつです。

親の反応は軽く

子どもは、苦戦が親をどれだけゆさぶるかを見ています。「できない」でため息、お説教、不安のあわてが出てくると、子どもは、これは大ごとで、避けたほうがいいことなのだと学びます。軽く、あたたかく、気にしていない声は、その反対を伝えます。これはふつうのことで、行きづまるのはあたりまえ。「大丈夫、むずかしいことって最初はそう感じるよね」と言って、のんびり待ちましょう。息をつめて見守る観客なしに、やってみる余白を子どもにあげるのです。

結果ではなく、やってみたことに気づく

子どもがやってみたら、うまくいったかどうかより、がんばりに目を向けましょう。「むずかしいと思ったのに、やってみたね」は、やってみることが勝ちなのだと伝えます。やる前から「できない」と言う子にとって、これはとても大切です。戦いのすべては、始めることにあるのですから。始めることで親のあたたかいまなざしがもらえるなら、始めることはこわくなくなり、やがて自然にできるようになっていきます。

親の苦戦も見せる

子どもは、大人はなんでも、苦労なく、ずっとできるものだと思っています。親が何かをむずかしいと感じて、それでも続ける姿を見せると、その思いこみはそっと書きかえられます。ことばにしましょう。「この結び目、むずかしいな。別のやり方でやってみよう」。できる大人も何かと格闘していて、あきらめないのだとわかると、「できない」は終わりの句点ではなく、誰もがぶつかるふつうのでこぼこに見えてきます。

もう少しよく見たいとき

たいていの「できない」のくせは、根気と小さな「できた」でやわらいでいきます。でもときどき、そのパターンがもっと強いことがあります。ほとんどすべての挑戦を避ける、ふつうのことで深くつらそうになる、同じ年の子ができることが本当にできないように見える。ある力が期待よりずっと遅れている、あるいは、避けることが気分の落ちこみ、眠りの悪さ、好きだったことへの興味の消失といっしょにある、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけ医に話してみましょう。早めに合った支えを得ると、本当に違いが生まれます。

ゆっくり、確かな勝ち

1週間で「できない」を追いはらうことはできません。親にできるのは、あたたかさと、小さな最初の一歩と、「まだ」ということばで、いつも同じようにこたえることです。そうすれば子どもは、思っていたより自分はできるのだという証拠を、少しずつ集めていきます。やる前から「できない」と言う子を手伝うたびに、親は、立ちどまって、小さく始めて、力は育つのだと信じることを教えています。それは、靴も絵もとっくにかんたんになったずっとあとまで、子どもを支えてくれる教えです。

ポイント: 「できない」は事実ではなく、こわさやいっぱいいっぱいのあらわれとして受けとめましょう。最初の一歩を小さくし、「まだ」をたし、やってみたことをほめれば、子どもは失敗すると決めつける前に始めることを学びます。

AAP, Building resilience in children

NHS, Children's mental health and wellbeing