こわがらせずに、子どもに安全のルールを教えるには
子どもに安全でいてほしいのは、どの親も同じです。でも、子どもを守ることと、世の中をこわがる子にしてしまうことのあいだには、細い境目があります。いつも注意ばかり、おびえた声ばかりでは、小さな子はこわがりで自信のない子になりやすく、しかも実際にはあまり身につきません。うれしいことに、前向きなことば、毎日の練習、育ちつつある力への信頼を使えば、不安ではなく、できる力と落ち着きを育てながら安全のルールを教えられます。
こわがらせても、身につかない
子どもはこわいとき、考えることも覚えることもむずかしくなります。そして、こわがらせることをくり返していると、それはただの雑音になっていきます。危ないことのたびに叱られたり、こわがらされたりする子は、不安でべったりになるか、同じくらい困ったことに、まったく聞かなくなってしまうことも。安全のことは、子どもが安心していて、自分にはできると感じているときにいちばん身につきます。だから、あわてた声ではなく、落ち着いた導きとくり返しで教えることをめざしましょう。長い目で見て子どもをいちばん守るのは、こわさではなく、自信とできる力です。
前向きで、はっきりしたことばを
どんなことばを選ぶかで、伝わりかたは大きく変わります。「してはいけないこと」だけでなく、「すること」を伝えましょう。シンプルで前向きな言いかたのほうが、注意よりも従いやすいのです。あわてた「道路に飛びださないで!」より「道路のそばは歩こうね」、ばくぜんとした「気をつけて」より「お鍋の取っ手は内側に向けておこうね」のほうがよく伝わります。決まりは短く、具体的に、いつも同じに。「オーブンは熱いよ。熱いものはけがをするよ」のように、かんたんな理由も淡々と伝えましょう。落ち着いた前向きな伝えかたが、子どもの理解と協力を助けます。
決まりは少なく、シンプルに、いつも同じに
小さな子が覚えていられる決まりは、ほんのいくつかです。道路のそばでは手をつなぐ、オーブンにはさわらない、水のそばに行く前は大人に聞く、など、その年齢にいちばん大切なものにしぼりましょう。毎回同じ言いかたで、いつも同じように守ります。予想できることが、子どもの学びと安心を助けるからです。決まりが多すぎたり、親の気分で変わったりすると、混乱して聞き流されやすくなります。ひとつ身についたら、またひとつ。少しずつ理解を積み重ねていきましょう。
安全な体験から学ばせる
子どもは、言われるだけでなく、やってみることで安全を学びます。安全な範囲で練習させてあげましょう。低い遊具に登る、大人が見ているところで子ども用のはさみを使う、少し重い物を運ぶ、といったこなせる程度の挑戦は、判断する力、体の使いかた、自信を育て、自分の限界をことばよりずっとよく教えてくれます。そばでしっかり見守り、本当に危ないときはすぐに手を出せるようにして、小さく安全な結果にも教えてもらいましょう。自由と見守りのこのバランスが、子どもを息苦しくさせずに安全を教えるかなめです。
大人がお手本になる
子どもは、言われたことより、見たことをずっとよくまねします。だから、大人がお手本になりましょう。階段では手すりを持つ、道路をわたる前に確かめる、シートベルトをする、熱い飲み物は手の届かないところに置く。その姿を子どもに見せます。「だれもひっかけないように、お鍋の取っ手を内側に向けるね」と、自分の安全な選択を軽く声に出すと、毎日の場面がやさしい学びになります。大人の行動と決まりが一致していれば、決まりは子どもにとって意味をもち、ずっと重みが出ます。
直すだけでなく、ほめて励ます
子どもが安全の決まりを守ったら、気づいて、あたたかくほめましょう。励ましは強い先生で、子どもはまたやりたくなります。「最後までおててをつないでわたれたね、すごいね」のひと言は、忘れたときのお説教よりずっと決まりを強めてくれます。子どもがうっかり忘れたときは、こわがったり怒ったりせず、落ち着いて決まりをかんたんに言いなおし、次へ進みましょう。大人の反応がおだやかだと、子どもは学ぶ気持ちを保てますし、安全はこわいものではなく、できるものとして感じられます。
成長に合わせて変える
安全の教えかたは決まったものではなく、子どもといっしょに育っていきます。幼児には、シンプルで体を使う決まりと、すぐそばでの見守りが必要です。年長さんになると、理由がわかりはじめ、もっと覚えられ、小さな役目もこなせるようになります。できることを見せてくれたら、少しずつ自由を広げ、年長さんにはかんたんな安全の判断にも参加してもらいましょう。判断する力と自分でできる力が育ちます。守りすぎず、求めすぎず、その子の今に合わせることが、時間をかけて安全を教える実際的な方法です。
相談したいとき
安全についての多少の不安は、子どもにも親にもふつうのことです。でも、子どもがずっとこわがっている、ふつうの遊びや活動に加われない、心配が続いて睡眠、食欲、毎日の暮らしに影響している、というときは相談しましょう。同じように、子どもの安全についての自分の心配が、手に負えないほど大きく、いつも頭から離れないなら、地域の保健師やかかりつけ医に話してみる価値があります。安心と支えをもらえます。親として落ち着きたいと助けを求めるのは、子どもを大切に思うしるしで、失敗のしるしではありません。
バランスを大切に
めざすのは、世の中をこわがる子ではなく、安全で、自信のある子です。前向きなことば、少ないけれどはっきりした決まり、安全な体験、あたたかい励ましで教えれば、子どもはこわさよりもよいものを手に入れます。本当の理解と、自分の身を守れる、育ちつつある力です。その静かな自信は、幼児期がすぎたずっとあとまで、子どもを支えてくれます。
ポイント: こわがらせるのではなく、落ち着いた前向きな決まり、安全な体験、大人のお手本、ほめることで安全を教えれば、子どもは安全で自信のある子に育ちます。