幼児がたたくとき、どうすればいい?
気に入らないことがあると、お友だちをたたく。抱っこしているときに、親の顔をパチン。手が出るたびに、「乱暴な子になったらどうしよう」と不安になりますね。たたくのは、子どもの気持ちと衝動と、使えることばとが、大きくかみ合わないときに出やすい行動です。目指すのは、すべての線引きに納得させることではなく、人を守り、避けられるきっかけを減らし、落ち着いているときに代わりの行動を1つ教えて、少しずつ使えるようにしていくことです。
まず、その場でできること
たたくことには、起きる前の予防と、その瞬間の対応があります。その場では、手を止めて「たたかせないよ」と伝えること、そして、けがをした人を先に気づかうことです。これはかんしゃくへのごほうびではなく、気持ちがいっぱいで受けとめきれない子への要求を減らすための対応です。
教えるのは、落ち着いてから
教えるのは、体も気持ちも落ち着いてから。何がきっかけだったかを短くことばにしましょう。「ブロックをとられて、くやしかったね」。遊びの中で、「やめて」「てつだって」「ぼくのばん」と言う練習をします。大変な場面で使えるようになるまでには、何度もの支えが必要です。すぐに謝ることを求めなくても、大人の対応はぶれずに続けられます。
はじめに見ておきたいこと
何がきっかけだったのかを知るために、メモをとってみましょう。子どもがほしかったもの、かかわっていた約束ごとや切りかえ、空腹や眠気のサイン、大人の対応、そして落ち着くまでの道のり。いつ、どこで起きやすいかが見えてくると、まだ身についていない力なのか、その子には荷が重すぎる要求なのかがわかってきます。いつもと違う急な変化は、体調不良や痛み、環境の変化のサインかもしれません。
たたいたときの対応
- 手を止めて、「たたかせないよ」と伝えましょう。
- けがをした人を、先に気づかいましょう。
- 体が落ち着いてから、きっかけをことばにしましょう。
- 遊びの中で、「やめて」「てつだって」「ぼくのばん」を練習しましょう。
ポイントは、事前の準備と、その場の短さです。苦手な場面の前に備え、約束ごとは一度だけ言い、危ないことを止められる近さにいて、くわしい話はあとまわしに。落ち着いて仲直りできたら、次に同じ場面で使えそうなひと言やしぐさを、いっしょに練習してみましょう。
家族や保育園と、決めておくこと
次に同じ場面が来る前に、まわりの大人で対応をそろえておきましょう。共通の一歩は「手を止めて、「たたかせないよ」と伝える」、そして「けがをした人を先に気づかう」。子どもがどれだけ早く変わるかではなく、大人の行動を決めておくのがコツです。短いことば、毎回同じ対応、子どものサインに合わせた距離感。それに、きょうだいの安全、外出先からの退散、要求のいったん中止をどうするかも、もめごとを増やさない形で決めておきましょう。
1週間ふり返ってみる
1週間だけ、気になる場面に絞ってメモをとってみましょう。何がきっかけか、疲れや空腹はあったか、どんな線引きだったか、危ないことはあったか、大人は何をしたか、どう落ち着いたか。シールを貼るような行動表とは違い、防げるパターンと、代わりに教えられる行動を見つけるためのものです。
ふり返るときの問いは、「前より安全か」「短くなったか」「わけがわかってきたか」「代わりの行動を少しでも使えたか」です。役立った落ち着いた対応は残し、避けられるぶつかり合いはなくしましょう。極端なまま続く、場所を問わず起きる、発達が気になる、といったときは、記録を持って専門家に相談を。
安全と、子どもの尊厳を守る
安全のためにすることは、危ない行動をいちばん小さな力で止めること。たたく、かむ、物を投げる、車道に走りだす、そうした動きは止め、近くの人やかたい物はできれば離します。いちばん興奮しているときに、恥をかかせる、おどす、たたく、謝罪を求めるのはやめましょう。線引きは守りつつ、子どもががっかりしているのはそのままでかまいません。
つまずきやすいところ
- 聞く余裕のないときに、長い話で納得させようとする。
- 人目が気になって、線引きを変えてしまう。
- 気まずさから出た笑いを、反抗や無礼だと決めつける。
- まだ身についていない力を、できないからと叱る。
前進のしるし
うまくいっているかは、すぐに言うことを聞くかでは測れません。爆発のピークが短くなった、手が安全になった、大人の助けを受け入れられた、合図が使えた、1日の流れがくずれきる前に戻れた。こうした変化が前進です。かんしゃくは、力が育つ途中でも起きます。時間をかけたパターンで見ていきましょう。
専門家に相談したいとき
専門家に相談したいのは、たびたびけがにつながるとき、極端に激しく長いとき、場所を問わず起きるとき、できていたことが消えたり、ことばでのやりとりに大きな困りごとがあったりするとき、大人が人の安全を守れないときです。差しせまった危険があるときや、子どもが急にひどく具合が悪そうなときは、すぐに救急などの助けを求めましょう。
覚えておきたいこと
予防できることは予防し、危ないことは止め、約束は手短に、そして代わりのやりかたは落ち着いてから教える。子どもに線引きを気に入ってもらう必要はありません。大切なのは、どんな対応も子どもの尊厳を守り、次の同じ場面でうまく参加できる手立てを渡すことです。
ポイント: たたいてしまうときには、いちばん安全で役に立つ次の一歩を1つ選んで、毎回くり返せる形にしましょう。
American Academy of Pediatrics, Positive discipline