子どもに心の支えが必要なのは、どんなとき?
かんしゃく、心配、涙、べったり、ときどき口にするどきっとすることば。大きな気持ちやむずかしい時期は子ども時代のふつうの一部で、たいていは時間と親の変わらない支えで過ぎていきます。でもときどき、これはただの時期とは違うかもしれない、と親が感じることがあります。そして自然に疑問がわいてきます。これは専門家の助けが必要なことだろうか。子どもの心のことで相談するタイミングを考えるのは、身がまえてしまうものです。この記事は、あわてさせることなく、相談することが何か大変なことが起きているという意味でもないという前提で、落ち着いて使える目じるしをお伝えします。
まずは、ふつうの浮き沈みから
むずかしいふるまいや気持ちの多くが、ただ育つことの一部だと思いだすところから始めると助けになります。幼児は、気持ちがコントロールより先に走るので、かんしゃくを起こします。小さな子はこわいものができ、離れることを心配し、すぐ泣き、べったりの時期や反抗の時期を通ります。こうしたことは、成長スパート、変化、疲れ、病気と結びついて行ったり来たりし、たいていはあたたかさ、毎日の流れ、時間で落ち着いていきます。
ですから、大きな気持ちがあること自体が心配の理由になることはめったにありません。もっと大切なのは全体の姿です。むずかしさがどれくらい強いか、どれくらい続いているか、そして子どもの毎日の暮らしにどれくらい影響しているか。
強さ、長さ、影響を見る
子どもにもっと支えが必要かもしれないか考えるとき、とくに役に立つ三つの問いがあります。
- 強さ:つらさやふるまいが、その年齢や場面から考えるより、ずっと極端ではないか。
- 長さ:数日で過ぎるのではなく、たとえば何週間も、長く続いていないか。
- 影響:食べる、眠る、遊ぶ、学ぶ、友だち関係、家族の暮らしなど、毎日の暮らしのじゃまになっていないか。
むずかしさが強く、続いていて、毎日の暮らしにさしつかえているとき、それが助言を求める価値のあるパターンです。大変な1週間は、たいてい心配いりません。子どもを足止めしている長く続く変化は、相談する価値があります。これが、子どもの心のことで相談するタイミングを考える中心です。
気にとめたいサイン
どれか一つでも診断になるわけではありませんが、次のようなことは、とくにいくつかが重なって、はっきりしていて、続いているときは、気にとめておきましょう。
- 上向かない悲しさ、気分の落ちこみ、涙もろさが続く。
- 不安やこわさで、ふだんのことができなくなっている。
- 前は楽しんでいた遊びや活動への興味が、ずっと失われている。
- 睡眠、食欲、元気さが大きく変わった。
- はっきりした原因のない、おなかの痛みや頭の痛みなどの体の不調がたびたびある。
- ふつうの時期をこえて、親と離れることがずっととてもむずかしい。
- 急な赤ちゃんがえり、身につけていた力がなくなった。
- 家族や友だちから離れて引きこもる。
- 乱暴さやつらさが、ひどく、たびたびで、釣り合わない。
- いつものその子らしさからの、はっきりした変化。
子どものことをいちばん知っているのは親です。何かおかしいと直感が言うなら、それだけで助言を求める理由になります。
早めの対応がほしい場面
状況によっては、もっと早めの対応がふさわしいこともあります。大きなトラウマ、喪失、大きな生活の変化を経験して苦しんでいる、むずかしさがどんどんひどくなっている、子どもや家族にとって毎日の暮らしがとても大変になっている。こうしたときは、先のばしにせず早めに助言を求めましょう。そして、小さな子であっても、ここにいたくない、消えてしまいたい、自分を傷つけたい、といったことを口にしたら、真剣に受けとめてください。子どもが今すぐ危ない、子どもの安全がとても心配、というときは、すぐに119番に連絡するなど、急ぎの助けを求めてください。
最初に話す相手
声をあげるといっても、いきなり専門医のところへ行く必要はありません。やさしい最初の一歩があります。
- かかりつけの小児科医は、よい出発点で、助言をくれ、必要なら紹介してくれます。
- 保健センターの保健師は、小さな子についての頼りになる相談先です。
- 保育園や幼稚園、学校は、そこで見ている様子を教えてくれ、支えにつながる窓口を持っていることもよくあります。
聞く前に、すべてをわかっておく必要も、完璧に説明できる必要もありません。「子どものことが心配で、何が起きているのかよくわからないんです」と言うだけで、十分なはじめかたです。専門家はこうした相談に慣れていて、いっしょに整理する手伝いをしてくれます。
親自身を大切にすることも
親の元気と子どもの元気は、深くつながっています。親自身がこころの不調、ストレス、疲れで苦しんでいるなら、自分のために支えを求めることは、子どものためにできるいちばんのことの一つでもあります。恥ずかしいことではありませんし、助けはあります。支えられている親のほうが、むずかしい時期の子どもをずっと支えやすくなります。
声をあげることは、強さ
いちばん心にとめておいてほしいのは、このことかもしれません。早めに助けを求めるのは、賢く、思いやりのあることで、失敗のしるしでも、何かまちがったことをしたと認めることでもありません。子ども時代のむずかしさの多くは、支えによく反応し、早めに助けを得るほうが、たいてい楽になります。子どもの心のことで相談するタイミングは、強さ、長さ、影響に気づき、直感を信じること。そして、かかりつけ医、保健師、園や学校との気軽な相談は、いつでもまっとうな出発点だと知っていること。聞くのは、おおげさではありません。よい親だからこそです。
ポイント: 大きな気持ちはたいていふつうのこと。でも、つらさが強く、何週間も続き、毎日の暮らしのじゃまになっているときは、直感を信じて、かかりつけ医、保健師、園や学校に相談することから始めましょう。
World Health Organisation, Mental health of children and adolescents